愛と笑いの「恩人感謝の日」

生きるか死ぬか。創業から数年間の激動期のソフトバンクと深く関わった前出の工藤や佐々木などを、同社では「恩人」として毎年感謝の意を捧げる意味で、ゴールデンウイーク期間に「恩人感謝の日」という休日を設けている。恩人たちへ必ず胡蝶蘭などの花を贈る。

(PANA=写真)

数年前、恩人たちは汐留にあるソフトバンク本社が入る高層ビル26階の社長室に招待された。そこで、自らパワーポイントを操り、恩人のためだけに孫正義自ら業績報告を行った。

「創業当初、まだ売り上げが100万~200万円だったころ、私は『将来、1丁2丁の豆腐屋精神で1兆2兆を扱える会社にしたい』とお話ししました。必ずそうなるから、応援してください、と。皆さま、今年売り上げが2兆円を超えました。本当にありがとうございました」

そうやって孫が小躍りしながらプレゼンし、深く頭を下げていたことを、この報告会を見守った社長室長補佐・人事部長の青野史寛は今も思い出す。

「脳がちぎれるぐらい考えろ。これは孫の口癖で、実際どんなミーティングや会見用の資料作成でも、本当に発表時間ぎりぎりまで考え抜き、1点の妥協もない。そうした孫の姿勢を間近で見ると、あの驚異的な事業欲のエネルギーになっているのは、その志の高さだけでなく、無力だった若い自分を引き立ててくださった恩人の皆さまに恥じない働きをするのだ、という強い信念なのだと感じるのです」