「なぜ怒らないんですか?」と動画視聴者から質問される

お風呂場の床が一気に真っ黒になり、ポン酢のポンの匂いが、ポンが何かは分かりませんが、たぶん柑橘系だと思いますが、匂いはポンだらけです。湯気とポン酢が合わさって、風呂がまるで鍋の日のリビングみたいな匂いです。

僕が「コラーボケナスー」と言って浴槽から立ち上がると「ハッハー」と言いながら逃げていきます。腹立つなぁと思いながら、カチが置いていったポン酢をとりあえず洗面台に置いて、もう一度浴槽に入りお湯に浸かっていると、こっちに向かってやってくる足音が聞こえます。今度は足音が複数人に増えています。

次に風穴から顔を出したのは次男のオクです。ものすごい笑顔で穴から手を振ってきて、手を振り返すとすりガラス越しにオクも何かを持っています。そしてその穴から持っている物を投げ入れてきます。納豆です。丸いタイプではなく四角い容器の納豆です。投げ入れると次はカチが顔を出して「食べてみろよ」と言ってきます。

「食えるかー持って帰れやぁ」と言うと、オクが2パック目の納豆を投入してきます。3パック入りの納豆のうち2パックがお風呂用になってしまいました。そしてカチとオクは、口々に「食べてみろよ」と言いながら、納豆をそのままにして走り去っていきました。

暴走ブラザーズがやんちゃをする動画や食べ物を粗末にする動画をあげていると、「なぜ怒らないんですか?」「一発しばかないと分からないですよ」的なDMやコメントをいただくことがあります。でも森ケはそんなことはしません。

「作ってくれた人に申し訳ない」と言っても通じない

5歳くらいまでの子どもは、その子にもよりますが、まだ言葉の意味を理解できません。

例えばポン酢をあんなふうに風呂で撒かれた時、僕たちは「もったいない」と思うでしょう。でもアイツらからすると「もったいない」の意味が分からないのに「コラァーもったいないやろ! そんなすんなボケェ!」とキレたとしても、理解していないのでなんの意味もありません。

あと「作ってくれた人に申し訳ない」とかも、社会に出たこともない子どもたちには、作ってる人への想像力も、作ってくれたことに感謝する感覚もないし、申し訳ないなんて思うはずがありません。大人の感覚で言っても意味がないんです。

でもやめさせたいから、やめさせるために怒鳴ったり、叩いたりする。その時はやめるかもしれませんが、それは親の顔色を窺ってるだけ、萎縮してるだけです。怒っている意味を分からないやつらに、子どもが理解できてないということを理解していない親が怒鳴っても意味がない。

親がそうやって“教育”をしていると、怒ったり叩いたりすることがその子の解決方法になります。子どもは意味が分からなくても行動は真似するからです。

握りこぶしを作る親とうずくまる子供
写真=iStock.com/takasuu
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