動画で勉強すると語彙が育たない
ここ10年で、YouTubeやTikTokなどの動画プラットフォームは若い人たちの中で必要不可欠なものになりました。
大学生の間でも、知識を文字からではなく動画で得る傾向が強くなっています。小中学生も、動画を勉強に活用している子が多いようです。
しかしこれは「前頭葉を育てる」という観点からいうと、ベストな方法とは言い難いと思います。
これまで幾度となく述べてきたように、学んだ知識は、最終的には言語化して「外に出す」ことでこそ生かされるものです。
この点、動画は文字情報に比べると分が悪いのです。
試しに、動画で学んだ内容を人に口頭で教えるのと、本で読んだ内容を教えるのと、どちらがたやすいか想像してみてください。当然、本という文字媒体で入れた情報のほうがスムーズでしょう。動画で見た視覚情報を正確に文字情報だけで伝えるのは至難の業です。
「こんなでっかいのがバーンと出てきて、次にドーンってなって」、というような説明になってしまいがちです。相手に伝わるように説明できる語彙がないため、そこを擬音で埋めているのです。
映像を言語に変換できる語彙――色彩、大きさや、形などを表現する言葉を持たないと、相手に伝わるアウトプットはできません。
これらの語彙は、映像やSNSの短文を流し見しているだけでは培われません。ですので、本を読んだり、大人と会話を交わすことで、多くの言葉を知ることが必要です。
「おりこうさんの脳」でインプットを積む過程では、映像だけに偏らず、文字に触れる機会を多く持つことを意識したいところです。
映像を言葉で説明させてみる
さて、今の話は逆手に取ると「前頭葉を鍛えるチャンス」にもなりえます。
「映像を言語化するのは難しい」ということは、それをあえて言語化しようと努力するとき、前頭葉を思い切り働かせることになるからです。
実際、子供たちを対象としたある実験で、簡単なゲームをさせた後に「どんなゲームだったの?」と口頭による説明を求めると、言葉を出そうとしている子供たちの前頭葉が、非常に活性化することが判明しました。
これは、一定程度の語彙が備わっていないと難しいかもしれないので、はじめは「絵にして説明させてみる」ことからはじめてもいいかもしれません。家庭内でも折に触れ、子供に「教えて」と聞いてみてはいかがでしょうか。