体を緩め、体を感じながら聴く
最近は傾聴について教える本が増えてきました。しかし、私が知る限りはどの本にも書かれていない、とても大切なことがあります。
それは、話を聴いているときに自分の体に少し意識を向け、体を緩め、体を感じながら聴くことです。話を聴くとき、体が緊張していたり、頭であれこれ考えたりしていたりすると、傾聴はできません。
英国のスピリチュアルの指導者であるエックハルト・トールは、自分の体を意識の一部で感じながら聴くことについて、こう述べています。
心の雑多なものが取り除かれた透明な空間ができ、その空間こそが、関係性が花開くために必要です(Tolle,1999;p.106;)(古宮訳)
話を聴くときには深くゆったりと呼吸をし、体を感じてリラックスしましょう。すると、傾聴の場は落ち着きとおだやかさと癒しをもたらす場となるはずです。
体には丹田と呼ばれる部位があります。おへそからおおよそ5センチほど下、そこから体の内側に5センチほど入った下腹部にあります。
東洋医学では、この丹田を体の中心と見なします。
息を口から細く長く吐いて自分のからだを感じながら聴く
私はカウンセリングが始まるとき、口から細く長く息を吐きます。このとき、吐く息は丹田から上がって来たものを唇から吐くつもりで、吸う息は鼻から丹田まで届かせるつもりでラクに吸います。
そして、話し手に注意を向けると同時に、ときどきほんの少しだけ自分の体を意識し、体を感じながら聴くようにしています。
聴き手は「何と言って返そうか」など頭のなかであれこれと考えてはおらず、話を聴きながらも、ただ自分の体を感じています。
このようにして聴いていると、話し手も本来の自分らしさを取り戻し、より自由で柔軟になる、そんな交流ができるように思います。
日常の会話でも、息を口から細く長く吐いて自分のからだをすーっと感じながら聴いていると、話し手と私のあいだに、おだやかなスペースが生まれるように感じます。