あらかじめ傾聴の終了時刻を決める理由

傾聴は心のエネルギーをたくさん使います。ゆとりがないとできません。

古宮昇『一生使える! プロカウンセラーの傾聴の基本』(総合法令出版)
古宮昇『一生使える! プロカウンセラーの傾聴の基本』(総合法令出版)

ですから、プロのカウンセラーは予約制です。そして約束の時刻が来ると、話の途中でもそこで終わります。冷たく感じますよね。そんなに割り切らないで、話し手の気が済むまで聴いてあげれば優しいのに。

でも、「話し合いは正午までで、この場所で行う」と、最初にきっちり設定してお互いの合意をもって開始するからこそ、集中して聴けるのです。

もし、話し合いがいつ、どこで始まるかわからないし、いつ終わるかわからない、そんな状況だったら、対話の途中で「この話し合いはいつ終わるんだろう? 私も忙しいんだけど……あれもしないといけないし、これもしないといけないし……」と時間が気になって、話し手に集中することができません。

すると、「次回、また話を聴いてください」と求められると、「え、また⁉ かなわないなあ」という気持ちになるでしょう。

ですから、プロ・カウンセラーが時間と場所をきっちり設定するのは冷たいからではなく、自分にできる支援をせいいっぱい提供するためなのです。

時間を決めておくことで「集中して話に応じる時間」を作る

同じことはカウンセリングに限らず、ほかの傾聴の場合にも当てはまります。

私が大学教員だったとき、学生や卒業生が「先生、ちょっと質問があるんですけど」とやって来ることがありました。彼らには悩みや迷いがあって、本当は質問のためではなく助けてもらうために来ていました。

でも、私はすぐその場で話を聴くことはなく、お互いのスケジュールを合わせて予約を取り、開始時刻と終了時刻を決めて相談に応じました。

「ごめん、今は時間がないけど、来週金曜日の午後4時から4時半に時間が取れるので、そのときはどう?」という具合です。

そうする教授は他にはほとんどいなかったと思いますが、私は時間を決めておくことで、落ち着き、集中した状態で話し合いに応じることができました。

あなたが傾聴の対話をする際も、あらかじめ開始時刻、終了時刻をお互いに合意することができればベターでしょう。

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