代弁してくれる人は気持ちがいい

では、私たちはなぜ「自分を持っている自己中心的な人物」に惹かれるのでしょうか。理由として、様々な心理的要因が挙げられます。

1つ目は、「理想像」として他者に影響を与える「参照影響力」。たとえば尊敬する上司の考え方や判断基準を参考にするなど、憧れの人が取った行動を模倣したり、意見を取り入れたりすることを指します。「自分をしっかり持ち、大事にしていて、意見をストレートに言う」姿は、参照影響力を持つとも考えられるでしょう。

2つ目は「確証バイアス」。人間には、自分の考えや価値観などを支持する情報ばかりを集めようとする傾向があり、同じ意見を持つ人には好感を抱きがちです。また、自分が言えない本音を、代わりに言ってくれる代弁者がいると、自己正当化願望も満たされて、その人を支持したくなります。

これらは会社の中や仕事の場面だけでなく、恋愛や人間関係など社会のあらゆる面でも効果が発揮されます。たとえば、恋愛関係における3ステップ「SVR理論」というものがあります。第1に「刺激」、第2に「価値観(共感力)」、第3に「役割(相互性)」の3つのステップを経て、関係は醸成されると考えられているのですが、これは恋愛だけでなく、自己中の人が好かれる人間模様にも当てはめることができそうです。

自己中を好きになる心理のナゾ

自己中な人は、その態度から頼もしさや自分を持っているという印象を「刺激」として与え、同じ考えを代弁してくれることで「共感力」を発揮、さらに内容によっては一歩引き、相補的な「役割」も担います。自己中な人が、魅力的な人物として認識されるとき、このような流れもプラスに働いているのかもしれません。

自分を中心に考えていても、自分の意見だけを押し通すのではなく、「自分はこう思う。みんなはどう?」「私は、これは苦手。得意な人はいる?」など、補完的な人間関係を築こうとする人は、恋愛でも一般的な人間関係でも支持を集めやすい傾向があります。