脳のGPS機能とは「ラス」という部位の働き
「脳の『GPS機能』はなんかわかるような気もするけど本当かな……」
ここまで読んでおそらく半信半疑に思うでしょうが、脳の「GPS機能」は科学的知見に基づいています。脳の「GPS機能」はたとえで、正式にはラス(RAS:Reticular Activating System:網様体賦活系)という部位の働きのひとつです。
ラスは1949年にピサ大学のH・W・マグンとジュゼッペ・モルッチという科学者によって発見されました。脳内で眠りと目覚めを調整する神経を調べていたところ、ラスを見つけたのです。その後も科学者たちが研究を進めた結果、ラスは脳に入るほとんど全ての情報を中継していることが明らかになりました。
脳はラスから送られてきた情報をもとにいろいろ考えたり、感じたりし、どのような行動をとるべきか体に指示を送ります。人が見るもの、聞くもの、触るもの、感じるものは、全て体の感覚神経を通ってラスに送られます。
情報の取捨選択を担っているのがラス
脳内でどのような思考や感情が生み出されるか、行動意欲が起こるかどうかは、ラス次第だといえます。ラスは「情報の仕分け場」です。どの情報が必要でどの情報がいらないか、必要な情報にどのくらい注意を向ければいいかまで判断します。
この機能は非常に重要です。脳には大量の情報が流れ込んでいます。一説によりますと、人は毎秒4億ビット(1ビットはコンピュータが扱うデータの最小単位)もの情報を処理しています。
もちろん、あなたがそれを意識することはありません。そんな大量の情報を意識的に処理しようとすれば脳は混乱します。この情報の取捨を担っているのがラスなのです。入ってくる情報をふるい分けて、何に注意を向けさせるか、どれくらい関心を呼び起こすか、どの情報をシャットアウトして脳に届かないようにするかを判断します。