「健康的な生活を送る」では不明瞭

習慣化するには習慣の目的地を明確にすることが重要なのです。ですから、たとえば「健康的な生活を送る」「朝型に切り替える」では不明瞭なのです。具体的に何をすればいいのか脳は判断できません。

渋谷のレストランに行きたいのに「渋谷駅」と入力しているような状態です。「健康的な生活を送る」でしたら「今月はお風呂に入る前に毎日10回腕立て伏せをする」、「朝型に切り替える」ならば「これから3週間、平日は朝6時に起きる」のように測定可能な目標にすることで脳の「GPS機能」は発動します。

多くの人が習慣化できない語学も、脳の「GPS機能」がうまく働くように目的地を設定すればいいのです。「英語を毎日30分勉強する」ではなく「毎日30分勉強して、来年までにTOEICを今より200点高いスコアにする」と具体的な目標を掲げることで「GPS機能」は働きます。

目標をより明確にすれば、その目標に向けて脳は指示を出します。これまでのあなたがダメなわけではなく、目標の立て方が脳の原理にマッチしていなかっただけなのです。

人が意識的に行動するときには脳の「GPS機能」が必ず発動しています。運動や勉強、ダイエットを始めて、うまく習慣化できている人は本人が意識しているかはともかく、脳の「GPS機能」をうまく働かせています。

脳のGPS機能を働かせないと欲望に流される

では、逆に「GPS機能」を働かせないと私たちはどうなるのでしょうか。欲望にひたすら流されてしまいます。仕事をしなければいけないのにスマホをいじってしまう、食べ過ぎとわかっているのにデザートをコンビニで買ってしまう、寒くて面倒くさいから毎朝の散歩に行かない……。

誰にでもそうした経験はあるはずです。脳が快楽を感じるかどうかが行為のトリガーになっています。脳が気持ちよく感じるか、不快に感じるかが、行為を継続できるか、挫折してしまうかを分けるといっても言い過ぎではありません。

トレーニングジムで腕立て伏せをしているアジアの女性
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

この認知科学の仕組みをうまく使うことで習慣化に近づきます。その仕組みこそが「GPS機能」なのです。

「GPS機能」をうまく活用できるようになれば、最初は気が進まなかった習慣化への取り組みもモチベーションを高く維持しながら続けることが可能になります。いつのまにか取り組みそのものが楽しくなり、目標に向かっての行為が不快でなくなります。

最終的には「習慣化のためにやらなくては」と意識することなく、日常生活に組み込めるようになります。今の時代はあらゆるところに誘惑が転がっています。習慣化が挫折しかねない原因はいくらでもあるわけです。

あなたも、幾度となく誘惑に負けてしまったはずです。そうした環境下で欲望に支配されずに自分を律するにはこれまでとやり方を変えるしかありません。そして、それは脳の「GPS機能」を使うことで軽々と実現できてしまうのです。