「芸人という柱」しかない現実に怯えていた

その方の話を聞く以前から、芸能界の名だたる人も、不動産をはじめ、さまざまなジャンルへ投資をして、芸能界で食っていけなくなるときに備えている人が多い事実は知っていました。

また、つき合いのある社長さんたちも、本業のほかに別の「収入の柱」を構築していることも聞いていました。

そうした予備知識を持ちながら、僕自身はどうやって収入の柱を作ればいいか思い悩んでいたのです。

そんなタイミングで、芸能界でトップを走っている方の「不安」を知ってしまった。

そしてこう思いました。

「俺ももうひとつ柱を作らんといかん」

そこから「投資への扉」が開いていったのです。

もちろん、その方々のせいだとは微塵も思っていません。

ただ、漠然とした思いがある中で、2017年に暗号通貨に出会ってしまった。そこからはすでに説明した通り、「欲にまみれて」しまいました。

騒動の後に、冷静に振り返ってみると、もし30代で暗号通貨に出会っていたら、僕はなびかなかったんじゃないかと思います。

自分が「芸人という柱」しかない現実に、怯えていたのかもしれません。

そしてすべてが明るみになった

2022年の5~6月の頃でしょうか。僕の投資に関するトラブルは芸能界でも知られるところになってきました。そして、ある番組の収録時に、僕とも仲のいい芸人が「木本さん、なんかお金のトラブル大変なんでしょう」と、松竹の後輩芸人にトークとしてぶっこんできたのです。

向こうからしたら軽いフリでしたが、現場は凍りつきました。後輩も、トラブルについて知っていましたから、なんとか取り繕おうとしてくれたそうです。マネジャーも現場に立ち会っていましたから、その事実はすぐに事務所の上層部に報告されました。そして、後日その部分はカットしてもらうことで決着しました。それを伝えられた僕は、

「これはもうヤバいな。こっから目くるめく速度で、マスコミに広がるんやろうな」

と感じ、トラブルが表沙汰になるのを覚悟しました。

木本武宏
提供=KADOKAWA

そして、事務所と話し合いをして、すべての生放送のレギュラー番組や、収録済みの番組を含めて、出演しているものをストップしてもらいました。とにかく、少しでもリスクを減らすことしか考えられませんでした。

そして7月中旬に、一斉にマスコミが報じます。