立憲公認候補がいたから東京15区を取れた

ところで「立憲が前面に出た方が、野党は大きくまとまりやすい」とはどういうことか。その答えの萌芽が、今回の東京15区補選でみられた。連合東京の「自主投票」である。

東京は連合の「反共」志向が、全国の地方組織の中でも特に強い傾向がある。無党派層が多く、国民民主も候補を擁立する余力があるため、島根や長崎のような大きな「構え」の構築は難しい。今回の補選で連合東京が、国民民主の推薦候補に「全振り」しても不思議はなかった。

だが、連合東京はそうしなかった。芳野氏は東京についても、立憲候補が共産党から支援を受ける構図に不快感をあらわにしたが、一方で連合東京の自主投票を「受け止める」とも述べ、事実上黙認した。「反共」の建前を維持しつつ、立憲への配慮を見せた形だ。

これが選挙結果に及ぼした影響を評価するのは難しいが、少なくとも国民民主の推薦候補に票が集まるのを、一定程度防ぐ効果はあっただろう。

もともと国民民主は、東京15区で公認候補を擁立する方針だった。玉木雄一郎代表は、島根と長崎では同党が公認候補を擁立せず、逆に東京では立憲に擁立を見送ってもらい、互いに支援する「すみ分け」を構想していた。

国民民主はその後、擁立を予定していた人物の公認内定をなぜか取り消す事態となり、玉木氏の構想は崩れた。だが、もし同党が予定通り公認候補を立てていたら、共産党は対立候補を擁立し、補選は共倒れになった可能性が高い。国民民主でも共産党でもない立憲の公認候補だったからこそ、両党がそれぞれの形で同じ候補を応援する(あるいは「邪魔をしない」)形ができたとも言える。

自民党との一騎打ちの選挙を戦う時、このわずかの差がものを言う可能性は十分にある。

「仲の悪さ」を気にする必要はない

そろそろ小選挙区制の特性を理解して、それぞれが「大人の対応」をすべき時だ。

「政権交代」というみこしを担ぐ時、担ぎ手同士の仲が悪いことを問題視する必要はない。事故を起こさず前に進むための、最低限の認識の共有があればよい。「自民党政権を倒し、自己責任の社会を終わらせ『支え合い』の社会をつくる」、この1点があれば良い。

その時「誰にとっても担ぎやすいみこし」は、野党第1党の立憲だ。今回の補選全勝で注目されたことで、立憲の党名を前に出した方が、現実に「勝ちやすい」空気も生まれつつある。立憲カラーを前面に出した候補を他の野党が側面支援する「基本のスタイル」をまずはしっかりと意識し、あとは地域事情によって支援の形にバリエーションをつけていく形が望ましい。

だから立憲は、第1党の自らが責任を持って「勝ちを取りに行く」姿勢を、もっと強く打ち出すべきだ。大きく遅れている候補者擁立を急ぎ、野党陣営の芯を明確に作り、その後に他党に協力を呼びかけるべきだ。労組や市民連合などの支援団体は、政党同士の調整が円滑に進むよう、最大限の尽力をすることに徹すべきではないか。

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