「大きな構え」を阻む連合と共産党の軋轢
東京ではこの枠組みを構築できなかった。9人が立候補した乱戦の中、国民民主は小池百合子東京都知事と組んで無所属候補を推薦し、立憲の公認候補と対決した。
「大きな構え」は崩れたが、乱戦を制して立憲が勝利した。国民民主が離れた分、自主的支援に回った共産党の動きが良く、「構え」の欠落を補った面はあるが、主な勝因は候補者が乱立したことで、候補がいなかった自民党の支持層や無党派層の票が分散したことだろう。この結果、候補者の中では「第1党」であり、組織力もあった立憲に有利な戦いとなった。
自民党が次回、態勢を立て直して候補を擁立した場合、今回の枠組みで勝ちきれるかと言えば、やや心許なさが残る。こちらも「○○のおかげで勝てた」と言える状況にはない。
補選を振り返れば、立憲は国民民主、共産、社民との4党でともに戦う「大きな構え」づくりが急務であるとわかる。それを阻むのが、連合及び国民民主党と、共産党との軋轢だ。
今回の補選でも、野党陣営は大きな勝利を得たにもかかわらず、選挙直後から険のある言葉が飛び交った。連合加盟労組の幹部が今回の勝利で「もう共産に候補者を取り下げてもらう必要はない」と述べた、と毎日新聞に報じられ、こうした声に反発した複数のリベラル系識者などは「立憲がとるべき道は『連合切り』」などといきり立った。
外野の発言とはいえ、こうした応酬は無党派層の立憲への印象を悪化させ、自民党を利することになりかねない。
政権交代のための候補者がそもそも足りない
「連合vs共産党」のあつれきを乗り越え、野党が大きくまとまるために、立憲は何をすべきか。それが冒頭に述べた「自力で戦う」ことである。「候補者調整を待たず、自前の候補者を可能な限り擁立する」ということだ。
つまりどういうことか。
「大きな塊」にせよ「市民と野党の共闘」にせよ、これまでの野党の戦術は「立憲が他党と候補者調整をし、選挙区を譲り合って候補者を一本化する」というものだった。一本化というと、野党各党がそれぞれ多数の候補者を立て、多くの選挙区で候補者が競合しているように聞こえるが、実態はその逆だ。候補者が全く足りていない。
立憲は小選挙区で200人、比例単独も含め衆院定数の過半数(233議席)を上回る240人以上の候補擁立を目指しているが、現在の候補予定者は170人あまり。全員が当選しても、単独では政権を担えない。これでは「政権交代」を訴えても、絵に描いた餅である。