ところが、その後も覚書が遵守されない状況が続き、OSCEの関与のみでは内戦を止めさせることは不可能なことが明白になった。そこで、2015年2月に、フランスとドイツが介入することを決めたのである。
アメリカは一方的にウクライナに武器援助をしようとしたが、ドイツやフランスは、アメリカの動きは事態の悪化を招くだけだと反発し、ロシアとの良好な関係の維持にも配慮したのである。
威嚇や武力行使を伴わない外交はロシアに通用しない
こうして、2015年2月12日に、独仏の仲介で、ウクライナとロシアの間で、「ミンスク合意履行のための措置パッケージ」(ミンスク2)が成立した。内容は、OSCE監視下での無条件の停戦、捕虜の解放、最前線からの重火器の撤退、東部2州に自治権を与えるための憲法改正などである。
問題は、ロシアが、自国は紛争当事国ではないので、この合意を履行する責任はないと主張していることである。ウクライナはロシアも交渉に参加した以上、履行義務があると反論している。
しかし、この合意の後も、ウクライナ政府と親露派武装勢力は、お互いに相手が停戦合意に違反する行為を実行していると非難し、親露派勢力とウクライナ政府の間で小競り合いが続いていった。つまり、事態の抜本的改善は見られなかったのである。
2022年2月21日、ロシアは、ルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国の独立を承認し、翌22日には、プーチンは、「ミンスク合意はもはや存在しない」と述べた。そして、24日にはウクライナに侵攻したのである。
武力による威嚇、そして武力の行使を伴わない外交はロシアには通用しない。ブダペスト、ミンスクなどの覚書は、実効性を持たず、単なる紙切れに終わってしまった。