Meta社の著名人になりすました詐欺広告に関する声明が大きな反発を呼んでいる。特殊詐欺などの取材を長年続けてきたジャーナリストの多田文明さんは「今、詐欺被害の多くは、Meta社のSNSの広告から誘導されて騙され、その被害は拡大の一途だが、同社はほぼ何も対策をしてこなかった」という――。

前澤氏「詐欺広告なんてすぐ判別できるでしょ? なめてんの?」

Meta社は「著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みについて」の声明を4月16日に出しました。しかしそれを見て、筆者は愕然としました。

〈2016年以降、チームと技術に200億ドル以上を投資してきました。これには詐欺対策も含まれ、プラットフォーム上の利用者を詐欺から守るための多面的な対策を講じています〉

本当でしょうか?

Meta公式ウェブサイト「著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みについて」
出所=Meta公式ウェブサイト

筆者はSNSの広告から誘導されて詐欺被害に遭った方々の聞き取り取材を長くしてきて、この言葉には大きな疑念を覚えます。

実業家の前澤友作さんがMeta社の声明を受け、Xにて「まずは謝罪の一言は? 社会全体のせい?『審査チームには日本語や日本の文化的背景を理解する人を備えている』なら、俺や堀江さんや著名人が利用された詐欺広告なんてすぐに判別できるでしょ? なめてんの?」と言っていますが、その通りです。被害者を見ようとせず、寄り添おうともしない声明と受け取られてもしかたないでしょう。

SNS上では前澤さんや同じく実業家の堀江貴文さんといった有名人の名前や写真を無断で使用して本人になりすまし、投資を呼びかけるニセの広告を信じた結果、金銭をだましとられる被害が続出しています。

Facebookなどに出てくる、著名人になりすました広告からニセの投資サイトに誘導されての詐欺被害の拡大。それは結局のところ、プラットフォーム側が詐欺的広告に対して、ほぼ何も対策をしていなかったためです。

SNSに出てくる広告から誘導される形での被害が多く起きているのを筆者が明確に認識し始めたのは、4年ほど前の2020年です。被害者から次々に報告が寄せられたことがきっかけでした。

当時は、偽の通販サイトにアクセスさせて、商品の代金やクレジットカード情報を詐取されるという被害が中心でした。

それまでもネット検索などをして出てきた通販サイトを通じて騙されることもありましたが、急にSNSの広告から誘導されての被害事例が多くなったのです。

たとえば、こんなウソ情報がありました。

「高島屋傘下の免税店はコロナウイルスの影響で、全体売り上げは去年より90%も落ちており、免税店を閉店する」ので「在庫商品のスーパーセールを行う」……そんなニセ広告がSNS上に出てきました。

その頃は、コロナ禍ということもあり、多くの方がネット通販での商品購入をしていたので、そこを狙って有名企業になりすまして、ブランド品を格安で販売するという広告を出したのでしょう。

実際にニセ通販サイトの業者の住所に直撃したこともありますが、まったくの架空の住所を記載していたことが判明しました。(参照記事:“銀座三越の偽サイト”をとっちめに記載住所へ…現場で仰天した本物「銀座三越」の神対応 ネット通販+代引きの騙し売り多発 2021/10/24)