Meta社にとって詐欺グループはいわば“クライアント”

当時、有名ブラントをかたるなどのニセ通販サイトが横行するなか、お金の騙し取り方も変遷していきます。

ひと昔前は、ニセ通販サイト上に詐欺につながる銀行口座を記載してお金を振りこませていましたが、それだとすぐに不正口座として通報されて、銀行口座が凍結されたからでしょう。商品の注文をした後に、メールでお金の振込先を伝える手口も出てきました。

この他にもニセ通販サイトでは、クレジットカード情報を入力させて、その情報を詐取することも多いですが、それだけではなく、商品の注文をすると偽ブランド品などを「代引き配達」で届けて、商品と引き換えにお金を支払わせる手口も登場して、被害は拡大していきます。中身を開けてみたら、偽物で問い合わせようにも相手の業者に連絡が取れない状況で、泣き寝入りしなければならないという被害です。

そうした詐欺はほぼすべてがSNS上の広告を使って、ニセ通販サイトに誘導する形でした。この時、筆者が感じたのは、ついに詐欺グループは広告料というお金を払って(投資をして)も、消費者を騙す手に出てきたのかということでした。言ってみれば、Meta社にとって詐欺グループは“クライアント”というわけです。

当時は、ツイッター(現X)の広告からということもありましたが、ある時期からはMeta社の運営するSNSの詐欺的広告を通じて被害に遭ったという報告ばかりが寄せられるようになります。

iPhoneの画面上のアプリ
写真=iStock.com/stockcam
※写真はイメージです

2021年12月、ある女性が電動機付き自転車をクリスマスのプレゼントで買おうと思い、Instagramの広告に出ていた「超お買い得! 【一人当たり一台限定】先着60名様限定価格:1万400円」をみて、ニセ通販サイトにアクセスして被害に遭っています。

ニセ通販サイトでは、有名メーカーの定価14万3020円の電動自転車が大幅に値引きされて、1万490円になっており「お得だ」と思い、注文画面をタップしてクレジットカード情報を入力しています。

しかし商品はしばらくたっても届かず、詐欺ではないかと思い、クレジットカード会社に連絡します。しかしカード会社からは「カード決済が正式に済んでいる」といわれて、すぐには止められないといわれます。つまり、カード会社としては今の段階では「詐欺」とは確定できないので、様子を見てくれと言われたのです。このように、単にカード情報を盗むだけでなく、実際にそのカードでの決済もさせる手口も出てきました。

今も、ニセ通販サイト詐欺の手口はありますが、より悪質化したのが前出の前澤さんらが激怒している有名人をかたった投資詐欺広告です。

これが増えている理由は、日本人を狙う悪質な詐欺グループの台頭と、「日本では多額のお金を騙し取れる」という共通認識があるからでしょう。

これまでのニセ通販サイト詐欺では、クレジットカードでの決済は1万円ほどで、カード情報がもし不正に使われても数十、数百万円の被害です。しかしニセ投資サイトに誘導すれば、ケタの違う数千万円、数億円もの多額のお金を奪うことができるのです。

つまり、多くの人から少額を集めるよりも、ターゲットを絞り、本人が騙されたと気づくまで、多額のお金をとり続ける形のバージョンも駆使してきたわけです。今回の有名人をかたる詐欺広告は、これまでの有名ブランドをかたったニセ通販サイトの延長線上に出てきた手口といえるわけです。