過大な期待はせずに、効率化のアシストは受ける

人工知能に創造性をもたせる研究も進んではいるが、今のところうまくはいっていない。文章にしても、画像、映像にしても、最大公約数的な当たり障りのないアウトプットはそこそこ得られるが、人間のプロが精魂込めた作品に比べると見劣りする。

人工知能の出力が、プロの文章のように人の心を動かしたり、「うーむ」と唸らせたりすることは当分ありそうもない。生成AIの描く絵が、ピカソやバスキアの作品のように高値になることも期待できない。ましてや、全編人工知能が生み出した映画がアカデミー賞を受賞することもしばらくは考えられないだろう。

生成AIを含む人工知能は、人間がこれまでに生み出したアウトプットを統計的に学習して、傾向を再現している。だからこそ、その出力は優等生的であり、そこそこ使えるが、びっくりするような感動はない。

一方、人間は生きている。失敗することもあるが、思わぬブレークスルーやイノベーションも起こる。人工知能が統計的学習の「レッドオーシャン」での優等生だとすれば、人間は時に前例のない「ブルーオーシャン」を泳ぐことができる。人工知能は、ブルーオーシャンにはついて来られない。なぜならばそこには「前例」という「データ」がないからだ。

これからの時代に有効なライフハックの一つは、人工知能を自分が好きにジャンプしたり走ったり飛んだりするうえでの「足場」とすることである。

前例のないことをあれこれとやって、時には破綻しかけたとしても、人工知能がちゃんと補って辻褄を合わせてくれる。天才型の破天荒(人間)を、優等生型の実直(人工知能)がサポートするという感じだ。そのような関係性を築くことができたら、人工知能時代に最も輝く人になることができる。

肝心なことは、人工知能ができること、できないことをきちんと見分けて、あまり過大な期待はせずに、しかしちゃっかりと最適化、効率化のアシストは受けることだろう。

最近、チャットGPTのような生成AIを相手にアイデアの「壁打ち」をするのが流行っていて、オープンAIのサム・アルトマン氏もやっているようだ。どんな奇想天外な考えも、人工知能がきちんと整えて打ち返してくれる。生成AIとの付き合い方の一つのベストプラクティスだといえる。

(写真=PIXTA)
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