「飛ばし読みをする」はすすめない

【井上】試験では不利になります。ただ、助言には注意をはらいます。たとえば「飛ばし読みをする」などの手法はあるのですが、読む力を一層低下させるリスクもあるので、私からはすすめにくいのです。

そもそも、なぜ読みが遅くなるのかというと、情報処理の問題になります。どうしても「書かれていることを理解しながら読みたい」という気持ちが先立ってしまうと、なかなか目が先に進まなくなります。そんなときは、一度立ち止まって自分はどこがわからないのか、遅くなるときの文章種はどのようなものかといった自己診断をしてみましょう。短絡的に目先のテクニックには飛びつかないほうがいいよ、と生徒には常に言っています。

【加藤】それでも、「どうしたら速く読めるようになりますか?」と聞かれたら、どのように答えていらっしゃいますか?

【井上】それはもう、「急がずに慣れていくしかない」としか言いようがないですね。

【加藤】数をこなすしかないのですね。

遅くてもいいからじっくり読む習慣が重要

【井上】読むスピードというものは、背景知識の量に比例するものです。読むのが遅いと悩んでいる子を見ていると、どんな文章でも遅いわけではなくて、文章のテーマによるのですね。では、どの領域の知識が不足しているのか、それを振り返りながら一つずつ吸収していくことです。この作業を続ければ少しずつ速くなっていくのですが、やはり受験生のいる親は心配になりますよね。

【加藤】結局、問題なのは試験の制限時間に間に合わなくなることであって、子どもが好きで読書をする分には、ゆっくり読んでもいいわけですよね。

井上志音著、加藤紀子聞き手『親に知ってもらいたい 国語の新常識』(時事通信出版局)
井上志音著、加藤紀子聞き手『親に知ってもらいたい 国語の新常識』(時事通信社)

だから、たとえば子どもが自分の好きな本を読んでいるときに、「そうやってゆっくり味わって読むのはいいよね」とひとまず認めてあげた上で、「それじゃあ、試験のときはどうしようか」と問題意識を持たせるというのはどうでしょうか。

【井上】それもいいかもしれませんね。保護者へのアドバイスとしては、受験のことは気になりますが、それでも焦らずに、遅くてもいいからじっくり読む習慣をつけさせましょうとしか言いようがありません。ゆっくり読んだ本の情報が、次の読書の礎となって、次第に読む速さにつながっていく。無理に速く読ませようとすると歪みが出てきてしまいますから焦らないことです。

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