基本的には脚色だと思ったほうがいい
しかしながら、明子がそういう意図をもって詮子のもとに引きとられたとは考えにくい。また、『光る君へ』は第14回「星落ちてなお」(4月7日放送)で、明子が憎んだ藤原兼家が死去するようだから、ドラマでは、彼女は呪詛によって命を奪ったと納得し、その後は道長ら藤原氏に対して敵意を抱くことをやめる、という展開になるのかもしれない。
しかし、普通に考えれば、道長は姉に勧められて天皇の孫である明子と結婚し、高貴な血を自身の血統に入れ、明子もまた、それによって藤原氏の後ろ盾を得ようとしたのではないだろうか。
だから、道長も明子のことをそれなりに大切にした。道長ほどの権力者でも、生涯を通して正式な妻は倫子と明子の2人だけで、倫子とのあいだに2男4女、明子とのあいだに4男2女をもうけ、それもほぼ交互に生まれている。
笑わない明子や、その呪詛は、脚本家がドラマにつけた凹凸だといえる。絶対になかったとはいえないが、基本的には脚色だと思ったほうがいい。ただし、平安時代とはそういうことが行われていた時代だと、この凹凸から感じとるのは悪いことではない。