保有金融資産20億円が分水嶺になる
筆者は、富裕層向け資産運用アドバイザーや金融コンサルタントの立場で、数多くの国内外の富裕層や個人投資家と接してきた。あくまで経験則になるが、保有金融資産20億円が、分散投資を意識する一つの分水嶺になる場合が多い。
金融資産がおおむね20億円未満であれば、まだ資産を増やす途上と考える富裕層も多く、従来通りリターン重視、都度単品購入中心の富裕層が多くなる。つまり、ポートフォリオ営業や、バランス型ファンド、ファンドラップといった分散投資を提案しても、まずほとんど反応がなかったりする。
逆に、金融資産がおおむね20億円を超えてくる富裕層になると、長期・安全・安定・保全を求める傾向が強くなり、分散された教科書的なポートフォリオが組まれているケースが増えてくるのだ。必然的に、個別株式やデリバティブ商品だけでなく、日本国債や米国債といったプレーンな債券を保有したり、社債やソブリン債に加え、ハイブリッド証券やクレジットリンク債といった債券投資への理解度と保有率も高くなる。
NISAのデメリットや「長期・分散・積立」の是非も考えるべきだ
つまり、金融資産20億円以上の超富裕層や、機関投資家クラスでなければ、分散効果は発揮されないのではと考えられる。銀行や証券会社など金融機関は、ただ単に「長期・分散・積立」が大事だと正論をかざすだけでなく、こうした解消されていない疑問点やデメリットについて、隠すことなく示していく必要があろう。
NISAをきっかけに資産運用に関心を持ったり、実際に始めてみることはもちろん悪いことではない。とはいえ、NISAを始めれば、自動的に儲かる訳ではなく、売却して利益がでなければ、税制メリットを得ることもない。NISAのデメリットや「長期・分散・積立」そのものの是非にも目を向けてから投資を始めても遅くはないはずだ。