新NISAを今始めるべきなのか。金融アナリストの高橋克英さんは「NISAを始めれば自動的に儲かるものでは当然ない。損失リスクもある。さまざまなデメリットもあるため、口座開設すらしない人もいる」という――。
3つの瓶にコインを入れる女性。コインがほとんどない瓶、コインが少ない瓶、コインがコインが詰まった瓶
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「株で儲かった」広まる成功体験とキャンペーン

NISAとは、日本国内での株式や投資信託などの投資における売却益と配当への税率を非課税とする制度である。2024年1月から始まった新NISAでは、非課税期間を無制限にし、年間の投資上限額を最大360万円(成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円)に引き上げ、生涯に亘る非課税限度額も1800万円に増やされた。

ちょうど軌を一にして日経平均株価が4万円を超えるなど、株式市場が高騰するなか、「実際に株で儲かった」、「スマホアプリ上の含み益がどんどん増えている」といった成功体験が広がっている。それを背景に、楽天証券やSBI証券などネット銀行だけでなく、大手証券会社やメガバンクに地銀や信金に至るまで、「NISAキャンペーン」と称し資産運用セミナーの開催、キャッシュバックやポイントや金利の優遇とあの手この手で顧客の取り込みを図っており、NISAの新規口座数は増加し続けている。

もっとも、NISAを始めれば、自動的に儲かるものでは当然なく、細かい点も含め、実際に始めてみるとさまざまなデメリットがあることも明らかになりつつある。

クレジットカードでの積立購入金額が引き上げられたが…

新NISAが既にスタートした後の今年3月8日にようやく内閣府令が改正され、クレジットカードでの投資信託など積立購入が月10万円まで可能となった。この改正を受けて、楽天証券やSBI証券などネット証券などが、クレジットカード積立の上限金額を引き上げており、新NISAでもつみたて投資枠でも、年間投資枠120万円に対して、月10万円のクレカ積立でスムーズに対応できることになる。

もっとも、新NISAは既にスタートしており、月10万円の積み立てを、クレカ積立で5万円、その他銀行口座引き落としで5万円と仕方なく分けて対応してきた個人も多い。クレカ積立10万円とするには、既存の積立設定をいったん解約して再設定する必要があったりするため、「分かりにくい」「面倒くさいのでそのままにしている」といった声も聞こえてくる。

30代会社員Aさんを待っていた「落とし穴」

今年からNISAを利用し始めた都内在住の30代会社員Aさんは、雑誌やSNSの情報を参考に、成長投資枠にて、米国マグニフィセント・セブンの一角である、マイクロソフトとエヌビディアの個別株を年初にそれぞれ120万円相当分購入してみた。スタート早々、株価上昇が続き、円安効果もあり、両銘柄とも2カ月足らずで30%を超える上昇となった。このため、後者のエヌビディアをいったん手じまいして利益確定しようと、全額売却し、手取りの月給近い売却益を手にすることができた。