痴漢の検挙数2233件

各都道府県は迷惑防止条例の中で「人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為であり、公共の場所又は公共の乗物において、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れる」などの行為をいわゆる「痴漢行為」と規定し禁止しています。

電車やバスなどの中での痴漢行為は、迷惑防止条例のほか、刑法176条の不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)によって検挙されます。

警察庁によると、2022年の迷惑防止条例違反での痴漢行為の検挙件数は2233件(電車内以外を含む)、電車内における不同意わいせつの認知件数は161件でした。ただこの数字がすべてではなく数多くの“暗数”が存在していると考えられます。

2021年に福岡県警が実施した調査では、痴漢の被害にあったときに「駅員や警察へ通報した」と答えた割合はわずか7.1%。被害者の9割以上が届け出ずに泣き寝入りをしている状況が明らかになりました。

チャリツモ『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)
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多くの人が、痴漢にあった後にとった行動として「我慢した」「その場から逃げた」と答えていることから、実際の被害件数は警察発表と大きくかけ離れたものだと考えられるでしょう。

痴漢は深刻な性暴力です。にもかかわらず、かつての日本では痴漢被害がとても軽いものとして扱われてきました。マンガやドラマなどの創作物の中では、痴漢は誰もが一度は遭遇する行為として、取るに足らない被害のように描かれることもありました。

公共の場で当たり前のように性暴力が繰り返される日本社会の異常性は、すでに海外にも知れ渡っているようで、CHIKANは今では国際語になっているのだそうです。

[参考]

・令和5年 警察白書(警察庁、2023年)
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r05/data.html

・痴漢被害の実態等に関するアンケート結果(福岡県警、2021年)
https://www.police.pref.fukuoka.jp/data/open/cnt/3/12162/1/tikan.pdf?20230825115007