イランと他の中東諸国が「BRICS」でつながる可能性

イランは2024年1月1日、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアとともに、BRICSに加盟した。エチオピアがUAEに非常に親密な東アフリカの大国であることを度外視しても、新規加盟5カ国のうちの4カ国が中東の国々であった。本来は、上述の国々が一枚岩であるわけではない。むしろイランと、それ以外の諸国との関係の間には、猜疑心さいぎしんしかない。とはいえ、イラク、シリア、イエメン情勢の戦火が激しかった一時期と比べれば、イランとサウジアラビアをそれぞれの盟主とみなすシーア勢力とスンニ派勢力の対峙たいじの構図は、だいぶ緩和されてきている。

だからこそ、BRICSの従来の加盟国は、それらの諸国の同時加盟を狙ったのだと言える。言うまでもなく、BRICSにはロシアや中国が存在し、反米的な傾向が顕著だ。国際司法裁判所(ICJ)でイスラエルをジェノサイド条約違反で訴えた南アフリカも含めて、BRICS諸国は、ガザ危機をめぐって、イスラエルに批判的である。イスラエルを批判できない欧米諸国とは、鮮明な対照関係にある。

今後、イスラエルが長期の軍事作戦で国力を疲弊させ、支援する欧米諸国の威信も低下していくのであれば、イランはBRICSの枠組みなどを活用して、他の中東諸国とも一定の対話関係を持つ多国間協調の枠組みに入ってくる可能性がある。そうなれば、「アブラハム合意」の「取引」を模索するトランプ路線は、行き詰まりを見せるだろう。

注目すべきは、トルコのエルドアン大統領が、際立って強いイスラエル批判を繰り返していることだ。ガザは、中東が欧州列強の植民地化の憂き目にあう前までは、オスマン帝国の一部だった。今でも、地中海世界の一部としての強いアイデンティティーを持つ地域だ。北大西洋条約機構(NATO)構成諸国であり、ロシア・ウクライナ戦争に対しても絶大な存在感を見せるトルコの反イスラエルの姿勢は、アメリカ外交にとっても重たい意味を持つだろう。

ガザ危機の国際的な注目度は高く、中東域外のインドネシアやマレーシアなどのイスラム諸国はもちろん、その他の諸国においても、反イスラエル・反欧米の機運は高まっている。仮にイランの脅威への対抗を共通の利益にして、アメリカがイスラエルとアラブ諸国との間の「取引」を持ちかけようとも、そのこと自体が反発を招いて国際的孤立に至る可能性も高まっている。