ズバ抜けた集中力で2カ月半ぶりの白星
9月21日には、ゲーム差なしで迎えたソフトバンクとの福岡決戦第1ラウンドを制し、13日以来となる首位に立った。大谷が「8番・投手」で先発し、自身8連勝となる9勝目。今季、投打で出場した試合は驚異の7戦7勝となった。112球を投げ8回4安打1失点。「投げている最中はあまり記憶がない」というほど集中力は研ぎ澄まされていた。7月3日の伝説のプレーボール弾以来、実に2カ月半ぶりの白星。首位返り咲きに大貢献した。
この時期、スポーツ紙の記者は「優勝原稿」に追われる日々を送るのが通例。「優勝原稿」とは文字通り優勝翌日の紙面に掲載する原稿のことで、通常5〜6枚程度の紙面をつくるため、担当記者は選手や監督の手記、対談など紙面を埋めるために企画取材を行わなければならない。
この年は日本ハムとソフトバンクが優勝圏内だったため、両球団の担当記者が準備。優勝しなければお蔵入りになる可能性が高く、優勝を願う気持ちが一層強まる頃だった。
父子二人三脚の「野球ノート」を独占公開
今季の日本ハムの主役はもちろん大谷。私は大谷の企画取材で最低でも紙面1枚を埋めなければならず、大谷の父・徹さん、母・加代子さんに取材申請。タイミング良くスポーツ紙一番乗りで岩手県奥州市の自宅で取材をさせていただけることになった。
これまで球場などで両親の取材をしたことはあるが、実家での取材は初めて。リビングに寝転んでいたゴールデンレトリバーの愛犬「エース」(翌2017年7月に老衰のため死去)に見守られながら、徹さん、加代子さんが生み出すどこか心地良い和やかな雰囲気の中、取材は進んだ。
取材中、徹さんが「まだ誰にも見せていないものがある」とリビングを離れ、持ってきてくれた数冊のノートが企画のメインテーマとなった。今や日本が誇るスーパースターをどのように育てたのか。小学生時代に父と息子が互いに記した「野球ノート」がスポニチに独占初公開となった。