勉強だけの学校ではなかった筑波大学附属高校

「文武両道」とは、本来、武家の男子に対して、「文(学問)」と「武(武芸)」を両立しなければ、立派な武士にはなれないという教訓的な意味を持っていました。転じて現代では、勉学と運動(スポーツ)の両面に秀でているという意味で用いられている言葉です。

筑波大学附属高校は日本有数の進学校でしたが、「勉強だけの学校ではないですよ」と強くアピールしていたともいえます。独自の文武両道を掲げ、生徒の自主・自律・自由を重んじ、学問やスポーツなどの活動における協同体験を大切にしています。

そのため、部活動でスポーツをやっている生徒は校内でもイキイキとしていて、私も例にれず馬術部に入部し、部活動に励んでいました。

乗馬で馬に触れる人のイメージ
写真=iStock.com/LightFieldStudios
※写真はイメージです

ところが、この文武両道というのがなかなか難しい。私を含め運動部に入っている人たちは、勉強そっちのけで部活動に没頭したものです。特に高校1年生から2年生にかけてはひたすら馬術部の活動に集中していました。もちろん部活動をしながら、予習と復習をはじめとした私に合う方法で勉強を続けていました。

しかし、運動部で部活動に励めば励むほど多くの時間を取られます。そのため、効率よく勉強しなければならない状況に追い込まれました。いつも時間が足りないので、宿題もテストの準備も、さらに効果的に進められる方法を見つけなければならなかったのです。

勉強しているだけでは得られないこと

ただ、運動と勉強を両立させようとして気づいたことがあります。それは、運動による学習の効果、記憶力や集中力の向上です。中学生のときほど勉強しなくても、自然と頭に入って記憶できるのを実感したのです。

記憶力の向上について、メカニズムを簡単に説明しておきましょう。運動をすると脳に酸素が多く供給され、そのため脳が活性化して、記憶力がアップするというわけです。

つまり、勉強で必要な記憶力をアップさせるには、ただ机に向かって勉強するよりも、運動とセットにするほうが、その効果を倍増させることができるのです。さらに、運動すると脳の血流がよくなって集中力が高まるだけでなく、体内でドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌が活発化し、やる気をアップさせてくれるので、前向きな気持ちで勉強に取り組むことができます。

このような効果は、ただ机に向かって勉強しているだけでは得られないということを、私はこのとき学びました。

いま思えば、筑波大学附属で「文武両道」が尊ばれる理由がわかる気がします。勉強と運動を両方頑張ることで、学習効果が倍増することを生徒に知ってもらいたいという考えが根底にあったのかもしれません。

その一方で、ある別の問題にも直面しました。それは、筑波大学附属の授業スタイルです。