筑波大学附属高校(東京都文京区)は日本屈指の進学校だ。そこではどんな授業をしているのか。卒業生でサイエンスライターの竹内薫さんの『東大卒エリートの広く深い学び方』(かんき出版)より、一部を抜粋する――。(第2回)
東京都文京区にある筑波大学附属大塚中学校・高等学校(写真=Lombroso/PD-self/Wikimedia Commons)
東京都文京区にある筑波大学附属大塚中学校・高等学校(写真=Lombroso/PD-self/Wikimedia Commons

AI時代を生き抜くために必要な学習法

ここで皆さんに、1つ考えてみてほしいことがあります。現代のように多様化した社会では、「正解のない時代」という言葉を耳にすることがあると思います。では、正解のない時代を生き抜くためには、受験勉強に限らずどのような学びが必要になるのか?

その答えこそが、探究を目指すプロジェクト型の学びだと私は考えています。そもそも、プロジェクト型の学習法とは、1990年代初めにアメリカの教育学者であるジョン・デューイが唱えた学習法です。

自ら課題を見つけて解決していく学習法で、このプロジェクト型の学習法によって課題解決能力や実践能力が育まれるといわれています。

皆さんもご存じかと思いますが、プロジェクト型の学習法は、何もひとりで行うだけではありません。授業中に少人数のグループをつくり、メンバーとともに問題発見や課題解決のためにいくつもの仮説を立て、実験や検証を繰り返しながら答えを見つけるまでのプロセスを重視する学習法でもあります。

こうしたプロジェクト型の学習法が注目されている背景には、文部科学省が推し進めている「アクティブ・ラーニング」があります。アクティブ・ラーニングとは、「能動的学習」とも呼ばれるもので、学習者(主に児童、生徒、学生)が受け身ではなく、能動的に学びに向かうよう設計された学習法のことです。

受け身ではなく、能動的に学ぶ

文部科学省がアクティブ・ラーニングを推進している大きな理由の1つは、従来のような受け身の授業や学習では、情報化社会やグローバル化といった社会的変化のスピードに適応するのが難しいという現実があることです。

そこで、多様な社会のなかで個を磨き、自分を位置づける力を養うために必要なのがアクティブ・ラーニングであり、プロジェクト型の学習法でもあるということです。

アクティブ・ラーニングも、プロジェクト型の学習法も、受け身ではなく、能動的に学ぶことで得られること、つまり「深掘り学習」なのです。どんな学びであっても、深掘りしていくことでたくさんのことを学べます。

そこから好奇心や興味という枝葉が出ると、その枝葉をさらに深掘りして多くのことを学べるようになっていく。こうした学びを重視しているのが、次に紹介する当時の筑波大学附属高校だったというわけです。