高齢者にとってニュータウンは「退屈な街」
また、ニュータウン内は毎日を過ごすにはとてつもなく「退屈な街」なのです。おざなりな公園に行っても、そこに遊ぶ子供の姿はありません。年寄りばかりになると、外を歩く人も少ない。街には図書館はおろか、みんなが集まれるカフェすらありません。
人が集まる場所がないため、地元住民同士のコミュニケーションも希薄になりがちです。ましてや、この世代の多くは企業戦士として、東京で仕事漬けの日々を送ってきたため、地元とのコミュニケーションなどを図ったこともなければ、そうしたことが苦手な人たちばかりです。
こうして、オールドタウンと化したニュータウンを脱出して都心、都心のマンションを買えなければ最寄り駅や最寄り駅に近い郊外ターミナル駅の駅近マンションを買い求め、街の匂いを嗅げるところに居を移す人たちが増加しました。駅近に居住すれば、すぐに電車に乗れますし、昔懐かしのオフィス街に出かけることだってできます。
近年、平日のオフィス街のランチが終わった飲食店などで、大勢の元ビジネスパーソンと思しき高齢者たちが、赤ら顔で飲食している姿を頻々と見かけるようになりました。彼らは寂しいのです。会社にしか知り合いがおらず、かといって、たびたび元の会社に顔を出すと嫌がられる。たまに都心に出て、旧交を温めるのが無上の楽しみなのですが、それには郊外住宅地はあまりに不便なのです。
多くの郊外住宅地の資産価値は大幅に下落する
3つ目が、マンションの資産性です。都心部の居住がこれだけ快適になると、今の現役世代にとって、親が苦労して通勤してきた郊外住宅地にあえて住む理由は見当たりません。このまま相続が起こっても、困るのは子供たちです。しかも、郊外住宅地は、よほどのブランド立地でもない限り、今後、資産価値は大幅に下落していきます。
であるならば、今の住宅を売れるうちに売って、都心や衛星都市中心部のマンションに住み替えておけば、資産性を保つことができるだろうと考えるのです。
実際、現在の団塊の世代までの元ビジネスパーソンは大企業に所属していたなら、退職金も厚生年金も手厚く支給されているケースが多いため、マンション販売現場では全額現金で買うような人も多くいるそうです。