「ゾン100」の躍進

呪術がこれだけの評価ならば、3カ月でそれを超える30万人ものMembers増加数を誇った『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと』はどう評価すべきだろうか。

2023年夏(7~9月)クールのメンバー増加表(万人)
MyAnimeList」より

小学館「マンガワン」に連載されてきた同作は初動スコア8.45の高評価で、呪術やBLEACHなどすでに人気確立したシリーズひしめき合う同期間で、最初からダークホースの呼び声が高かった(平均的に7~8に落ち着く中で、評価8以上は高い期待値の表れである)。

初動に10万人以上登録しながら、それが4倍以上に膨らんだ作品といえば、前回も特集した推しの子』『地獄楽』『天国大魔境』で、「ゾン100」もそれらに比する跳ね上がり方だった(2023年を通して最も飛躍した作品は、初動9万から54万人へ6倍になった『葬送のフリーレン』である)。

「ゾン100」の特徴は「食われる恐怖のないゾンビ」にある。3年前に完全なブラック企業において不眠不休で働かされていた主人公天童輝が、ゾンビだらけになった環境で「会社に行かなくても済む!」「青い空! 緑の木々! 真っ赤な血ッ!」と存分に生きることを楽しみ、100のやりたいことを叶えるために日本中を行脚する“無敵状態”からはじまる。

日本にしかできないテーマ

ゾンビは完全にモブであり、毎回話を転換させるとき、ヒロインと結ばれそうになるとき(話が完結に向かってしまう)、新しいキャラクターを登場させたいときの「合いの手」にすぎない。

ゾンビがきた! 逃げるぞ、といいながら、ゾンビが話を進展させ、主人公たちを成長させ、物語を紡ぐための必要不可欠な要素になっている。

ゾンビの群れと相対する生存者のイメージ
写真=iStock.com/gremlin
※写真はイメージです

こんな新解釈のゾンビモノは日本のマンガ・アニメにしかできないものだろう。

日本のブラックな労働環境をシニカルに捉え直す作品で、「人類史上最も前向きなゾンビパニック」「世界破滅をこんなにポジティブに考えるやつ初めて見た」「破滅的世界を自由に動き回ることがいかに自分自身や自分の夢・希望を盗む周囲に影響を与えるかを天才的な手法で描き直すゾンビパニック」と評価されている。

欧米ユーザーも度々引用するKANA-BOONによる主題歌「ソングオブザデッド」の歌詞もこの世界をうまく歌詞に落とし込んだタイアップ成功作である。