片づけが本当に苦手
見分けるポイント③ 片づけられない・ルールを守れない理由をチェックする
「片づけができない」「ルールを守れない」のは、ADHDのこどもにも、愛着の問題をもつこどもにも見られる現象で、よく混同されがちです。
けれども、「なぜできないのか」の理由がまったく異なります。
まず、ADHDのこどもは、片づけが本当に苦手です。片づけという作業は簡単に見えて、実はそうでもありません。
「モノを集めて→分類して→箱に入れて→棚にしまう」という具合に、いくつもの工程を順番にこなしてやっと完結する作業だからです。
ADHDのこどもは、こうした一連の作業を最後までやり遂げることが大の苦手。注意欠如や衝動性という特性のために、途中で他に注意がそれたり、突発的に別の行動をしてしまったりして、最後まで片づけを遂行することができません。
一連の行動を完遂できないという〈行動〉の問題なのです。
そこでADHDのこどもたちに片づけをしてもらうときには、片づけという一連の行動を一気にやらせないようにしましょう。
「まずはこれだけ」「つぎはこれ」「最後はこれだよ」というように、作業ごとに小分けにして取り組むようにして、都度確認します。そうすれは、片づけも難なく終えられるのです。
ルールを守れない理由も同じです。
「ルールはちゃんと守らなきゃ」と思っていても、自分の〈行動〉が制御できないためにはみ出してしまいます。
ですから、もちろん反省するのですが、またすぐに同じ行動をしてしまうのも特徴です。
片づけに心地よさや意味を感じられるか
それに対して、愛着の問題を抱えるこどもが片づけられない理由は、別にあります。
片づけが苦手だからではなく、「なぜ片づけないといけないのか」「片づけるとどんな気持ちになるのか」がわからないからです。「片づけると気持ちいいんだ」が実感できないので、ちっとも意欲がわかないのです。
片づけると気分がスッキリするし、充足感も得られるわけですが、そうした感情自体を学べていないので、いくら言われても響きません。
気分がいいときは片づけに取り組むこともありますが、やる気が持続しないので最後まで遂行できません。
ルールを守れないのも、やはり原因は〈感情〉の問題。ルールを守って行動したほうが気持ちいいという感情が育っていないのです。
むしろルールを逸脱して、自分に注目を集めようとする特徴があります。安心感に代わる快感を求めての行為です。
一方で、ASDのこどもは、本人のとらえ方(=認知)次第で片づけをしたり、しなかったりします。
片づいた状況に心地よさがあったり、片づけることに意味があるととらえていれば、完璧に片づけるのがこの子たちです。
ルールも同じで、自分のとらえ方と合致していれば完璧に守り通しますが、自分のとらえ方と合わない場合は断固拒絶します。
「一般的にこうだから」「決まりだから」という理由で動くことはありません。
本人が納得できる理屈があるときにだけ、行動にうつせるのです。