感情によってムラがあるか

愛着の問題を抱えているこどもの場合、多動に「ムラがある」のが特徴です。

昨日は落ち着いていたのに、今日は落ち着きなく動き回るという現象がしょっちゅう起こります。

このムラを生じさせているのは〈感情〉です。

もちろん感情は一瞬にして変わるものですから、一日中同じ気持ちで過ごせる人などいません。この変わりやすい〈感情〉の影響を受けて、多動になったりならなかったりするのです。

たとえば学校で、好きな教科の授業では落ち着いているのに、嫌いな教科では落ち着きなく動き回ってしまう。これは、「好き/嫌い」という感情に左右される“ムラのある多動”です。「やりたくないのにやらなきゃいけない」このネガティブな気持ちが、多動を引き起こします。

また、今、目の前で嫌なことが起きていなくても、過去の感情が原因で多動が起こることもあります。

たとえば、朝お母さんに怒られたことが気になって感情がコントロールできないというようなときです。

他にも、お母さんとふたりきりのときは大丈夫なのに、スーパーに行くと多動になってしまう子もいます。いろんな人やモノなどの刺激のせいで、感情が高ぶってしまうからです。

したがって、愛着の問題を抱えるこどもにあらわれる多動は、〈感情〉に左右されます。そのため、その子の感情の発達の段階や、混乱具合によって、日ごとに多動の度合いが変わったり、週ごとにパターンがあったりと、その子によって独自のムラがあります。

こうした多動のあらわれ方の違いは、日常的に一緒に過ごす人であるほど、見極めは難しくないはずです。

逆に、普段の姿を見ていない医師や専門家には、正しく判断できないことも多いのです。

「罪悪感」がわからない

見分けるポイント② 友だちとトラブルが起きたときの様子をチェックする

繰り返しになりますが、人間関係は、愛着という絆を結んだあとで築けるようになります。ですから、その愛着の絆が結ばれていなければ、当然他者とのトラブルが起きやすくなります。

愛着の絆がうまく結べていないと、感情が未発達で自分の感情がわかりません。そのため、「謝れない」特徴があります。

けんかして泣く子供と知らんぷりをする子供
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

罪悪感という感情を獲得できていないので、素直に謝ることができません。「自分が嫌な気持ちに見舞われている」ことはわかるけれど、謝ることでその感情が軽くなることを知らないのです。

また、〈感情〉の問題がつねに根底にあるため、どんな状況下にあるかによる影響を受けやすく、とくに集団のなかにいるとき、困った行動が出やすくなります。

「1対1」の場面では比較的落ち着いているけれど、「1対多」の場面ではアピール行動などが頻発して、落ち着きがなくなるのです。

ADHDのこどもも、行動の問題のせいで結果的に友だちとの関係がうまくいかないことがあります。

けれどもADHDのこどもの場合は、自分のせいで相手に嫌な思いをさせたんだと気づけば、すぐに謝ることができます。

ここが愛着の問題を抱えているこどもとの違いです。

ADHDは先天的な〈行動〉の問題ですから、状況の変化による影響はほとんど受けません。つまり、自分の感情が原因で行動に問題が起こることはないのです。

一方で、ASDのこどもにとっていつも問題となるのは、〈認知〉です。

自分がとらえている世界に、他の人が勝手に入ってくるのを好みませんから、没頭して遊んでいるところに誰かがやってくると払いのけてしまいます。

相手に悪気はなく、ただ一緒に遊びたかっただけだったとしても、その背景が理解できないため、トラブルが起きてしまいます。

このように友だちとの関係にトラブルが起きた際、そのあとの言動を観察することで、こどもたちの特徴が見えてきます。