GAFAの大規模な人員削減がアメリカの消費に影響を与える

【エミン】アメリカの景気については、ソフトランディング派とハードランディング派がいて、専門家の間でもコンセンサスが取れていません。ただ、いまのような状況で、過去にソフトランディングした例はない。たとえば、アメリカの景気先行指数は21カ月連続で悪化しています(2023年12月時点)。それでも雇用とサービスは強かったのですが、これも少し弱くなっています。

【図表】アメリカの景気先行指数(前年比)

アメリカの景気減速があるとすれば今年前半

【パックン】ハードランディング派はいままで「失業率を上げずにインフレ率を下げる」ことはできなかったから、今回もソフトランディングは難しいと言っている。

【エミン】そう。雇用統計は発表時点で強く見えるけど、実際には過去11回のうち10回は後で下方修正している。それに正規雇用が減って、パートが増えているから、明らかに減速はしていると思う。とくにGAFA(グーグル、アップル、メタ、アマゾン)は、めちゃくちゃ人を減らしている。株価は上がっているけど、それがどこで消費に影響してくるかが1つの懸念点。

仮に景気減速があるとすれば、2024年の前半だと思う。前半に何も起きなければ、そのままソフトランディングするシナリオもありうると思う。

もう1つは、逆イールド。歴史を振り返ると逆イールドが発生した後には必ず、景気後退が起こっています。今回の逆イールドはまだ解消していませんが、▲0.3%でだいぶマイナス幅が減っています。この逆イールドが解消したときが危険です。

「アメリカの長期債と短期債の逆イールドはチェックしておいたほうがいい」とエミンさん。
撮影=遠藤素子
「アメリカの長期債と短期債の逆イールドはチェックしておいたほうがいい」とエミンさん。

【パックン】逆イールドというのは、米国債の10年物の利回りが2年物の利回りを下回っている状態のことだよね。

【エミン】そう。長期の債券の利回りが高いのが普通だけど、いまは短期の債券の利回りのほうが高くなっている。10年物の利回りから2年物の利回りを差し引いた数値が一時は▲1.2%に達していたけど、それが最近は▲0.3%ぐらいまで戻っている。過去のケースを見ると、逆転が解消してから景気後退に突入しているんだよね。だから、その動きはチェックしておくべきだと思う。

【図表】米国債の長期(10年)と短期(2年)の利回りの差

【パックン】僕は、投資するときにタイミングを計って買ったり売ったりはしないから、あまり影響はないけど、もし、アメリカの景気後退が心配であれば、必需品メーカーのように不景気でも業績があまり影響を受けない企業の株式を購入しておけばいいと思う。

そうした企業は景気が良くてもあまり株価は上がらないけど、景気が悪くなったときも大きく下がるわけではないでしょ。エミンさんはプロだから、タイミングを見て売買しているよね。

【エミン】マーケットタイミングを計るのは、プロでも難しいですよ。次回記事では具体的な投資手法を考えていきましょう。

(スタイリング=末次秀彦(パックン)衣装協力=perky room STYLIA(エミン) 構成=向山 勇)
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