がん治療の「経済毒性」は患者本人だけでなく家族にも影響を及ぼす

近年、医療者の間で、がん治療に関連する経済的な負の作用を、吐き気や脱毛などの身体的毒性と同様に副作用の1つとして捉える「経済毒性(Financial Toxicity)」という考え方が提唱されている。がん患者を対象にした「平成30年度患者体験調査」によると、経済的な理由のため患者の4.9%が何らかの治療を変更・断念している。

医療者からも、経済的な負担が重いため、医師が薬を処方しても薬局へ受け取りにいかなかったり、医師が提案する治療・検査を断ったりする患者が最近少なくないと聞く。

黒田尚子『がんとお金の真実(リアル)』(セールス手帖社保険FPS研究所)
黒田尚子『がんとお金の真実(リアル)』(セールス手帖社保険FPS研究所)

その第一人者である愛知県がんセンターの本多和典医師によると、「医療者における経済毒性の認知度は約30%と低い」という。医療者は、患者の病気を治すのが仕事で、患者の懐具合を心配するものではない、知ったことではないという考え方もあるのだろう。

しかし、とりわけ高額な治療費のケースや、治療期間が長引くケースの場合、がん治療の経済毒性が、患者の治療結果や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼしている。さらに、この経済毒性は、患者自身だけでなく家族のライフプランにも影響を与える。

「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、がんになる前には、予防と経済的備えを。がんになった後には、お金のことも含め複数の頼れる相談窓口を持っておいていただきたい。

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