がん患者さんが安心してFP相談を受けるためのハードル2つ

FP全員がこうした対応をとるとは限らないし、がんのすべてに精通していなければ相談が受けられないわけではないが、がんなど長期療養が必要な患者さんやご家族への相談は通常のFP相談とは“勘所”が違うのは確かだ。

そこで、筆者としては、すべてのがん患者さんやそのご家族が、いつでも、安心して、がん患者さんの生活や治療に精通したFPに相談できるのがベストだと思っている。

そのためには、全国450カ所以上ある「がん診療連携拠点病院」などに設置されているがん相談支援センターでFPが医療者とともに相談を受けられる仕組みが必要だと考えている。

実際、医療機関での相談は、患者さんが無料で受けられるし、院内ということで安心感もある。医療者が同席してくれれば(同席しない場合もある)、FPは、治療のことなど確認しながら進められて、医療者側もお金や保険、公的制度に関する実務的な知識が身につく。良いことづくしのようだが、現実には難しい。

医療費のイメージ
写真=iStock.com/erdikocak
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壁は大きく2つある。

第一に、がん患者さんの相談を受けられるFPが少ないこと。第二に、FP相談を受け入れてくれる医療機関が少ないことだ。

まずFPについてだが、日本FP協会のデータによると、認定者は18万7502人いる(AFP認定者16万1819人、CFP認定者2万5683人:2023年5月現在)。

しかし、その7割が関東ブロックと近畿ブロックで占めており、地方在住のFPは圧倒的に少ない。しかも、認定者を業種別にみると、FP事務所・士業事務所は7%で、1割にも満たない。約6割が証券・銀行・保険・不動産など、金融機関勤務の企業系FPである。

筆者もしばしば地方にセミナーや研修などでの講演を依頼されるが、多くのFPは、保険代理店や不動産業など「本業」を持っている方がほとんどで、独立系FPは少ない。

その上、医療機関でのFP相談の報酬はごくわずか。ほぼボランティアである。独立系FPであっても、すでに生計が立てられる報酬のある仕事が別になければ引き受けられない。

このような、FP業界の現状から、仮に、その地域の医療機関でFP相談を実施できることになっても、派遣できるFPがいないのでは実現は難しい、となってしまう。

ちなみに、筆者のように、実際に医療機関で相談を受けているFPは全国でも10人に満たない。