「ブギの女王」となった笠置とライバルの淡谷が雑誌で対談
朝ドラ「ブギウギ」第21週では、福来スズ子(趣里)が喜劇俳優タナケン(生瀬勝久)と映画で共演することに。スズ子はいたずら盛りの娘・愛子を撮影所に連れて行くが、愛子のおてんばぶりは周囲に迷惑をかけ、ついには撮影を止めることになってしまう。
スズ子が「女優業」に忙しい一方で、同じ羽鳥善一(草彅剛)門下の歌手である茨田りつ子(菊地凛子)は、自身の歌に納得できない状況が続いていた。そんな折、りつ子は記者・鮫島(みのすけ)から、スズ子は歌を捨てる気だ、りつ子について「わてと違うて、歌しかない」と言っていたと聞かされ、「あの子もおしまいね。ブギも終わりよ」と言い放つ。それが記事になると、最初は、りつ子が本当にそう言ったのか疑っていたスズ子も、口車に乗せられ、鮫島の所属する雑誌でスズ子とりつ子の対談が行われることに。その後、鮫島に乗せられていたことに気づいた二人は、互いに謝罪し、友情を復活させる。
スズ子のモデルである笠置シヅ子と、茨田りつ子のモデルとなった淡谷のり子の対談は実際に『婦人公論』1949年11月号に「荊の道を語る 淡谷のり子、笠置シヅ子」と題して掲載されている。
「笠置さんおこりっぽくなっておりますよ」とたしなめる淡谷
対談では、いまだに「(ステージ本番では)あがる」という共通点や、舞台稽古から台本を手放す笠置と、本番が始まるまで手放せないという淡谷の違い、魚だけ食べていればいいという淡谷と、肉を余計に食べるという笠置の食の違い、「私は笠置さんの『センチメンタル・ダイナ』が一番好きですね」(淡谷)という発言のほか、二人の“恋愛観”の違いが語られているのが興味深い。
一部引用してみよう。
淡谷「笠置さんおこりっぽくなっておりますよ、噂にも聞いておりますけれど。それはやっぱりわたしみたいじゃだめですけれども、すこし恋人でもこしらえると――そうするとわたしまた笠置さんにいい味が出るのではないかと思いますわ。(編集部註:恋人になる人への注文について)やっぱり子供さんがあるから、からくなっているでしょう。」
(『婦人公論』1949年11月号)
ひとり娘の父親である吉本穎右を亡くしてから、新しい恋人を作ることは考えにくそうな笠置が「これからも独りで――」と問われると、笠置は「それはこちらは生きてるのですから」と答え、そこで淡谷が「(恋人は)自然とできますね。あせれば無理しますからね。ただ結婚を前提におかなくてもね、何んとなく、こう、たのしく――。」とフォローしている。