過酷な強制労働か、ガス室かの二択

自分たちを待ち受ける凄惨せいさんな運命を知らないまま、家畜を輸送する鉄道貨車で次々とアウシュヴィッツに送られたユダヤ人は、まず携帯する財産を没収され、年齢や健康状態をナチスの医師が判断して、強制労働のグループと、ガス室で殺されるグループに振り分けられた。

後者は、「身体を消毒する」との嘘の説明を聞かされた後、衣服を脱いで「シャワー室」に入るよう指示され、扉を閉められた後、シャワーノズルから噴出した「チクロンB」の青酸ガスで短時間のうちに殺害された。

命を取り留めた前者のユダヤ人も、縦縞の囚人服を着せられ、上腕の内側に固有の囚人番号を刺青で彫られた上で、電流の流れる二重の鉄条網で囲まれた粗末なバラックで暮らしながら、近隣に建設されたドイツの軍需工場で苛酷な強制労働に駆り出された。

ユダヤ系ポーランド人の8割が命を奪われた

アウシュヴィッツでのガス室によるユダヤ人大量虐殺は、1944年11月まで続けられ、100万人近いユダヤ人が同地で無惨に命を奪われた。その犠牲者で一番多かったのはハンガリーから移送された人々(約40万人)で、次がポーランドとそれに隣接するドイツ南東部のオーバーシュレージェンからの移送者(約25万人)だった。

前記したシンティ・ロマも、約2万人がアウシュヴィッツ絶滅収容所で虐殺された。

戦後の歴史家による実証的研究により、ナチス・ドイツが第二次世界大戦中に殺害したユダヤ人の数は、600万人に達したと考えられている。その大部分は、ナチス親衛隊が旧ポーランド領内に建設した、計6カ所の絶滅収容所で殺害された犠牲者だった。

そして、戦争中にドイツの蛮行で生命を奪われたユダヤ系ポーランド人の数は、270万人(戦前のユダヤ系ポーランド人の8割)にのぼるといわれている。

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