ラスベガスの地下に総延長960kmの迷宮

米西部の砂漠地帯に広がるネバダ州・ラスベガスは、2つの顔を持つ街だ。地上では中心街の「ストリップ(ラスベガス大通り)」を中心に、MGMリゾートとシーザーズの2大勢力が、華やかなカジノホテル街を競うように繰り広げる。

夜空に燦然と輝く噴水ショーで有名なベラージオや、ギリシャ建築を思わせる風格ある名門・シーザーズパレスもそのひとつだ。ほか、昨年オープンした世界最大の球体建造物であり、16Kの曲面LEDディスプレイがステージを飾るアリーナ「スフィア」など、世界随一の体験が観光客を呼び寄せる。

一方、こうしたネオン街の地下には、得体の知れないトンネル網が広がっている。ラスベガスの知られざる裏の顔だ。排水路などからなるトンネル網は、ラスベガスの地下ほぼ全域に、縦横無尽に延びる。その総延長は600マイル(約960km)にも達する。東京・広島間をゆうに超える距離だ。

排水用の地下トンネル
写真=iStock.com/AnnaArinova
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このトンネル内に、行き場のないホームレスの人々が最大で1500人ほど暮らす。ネバダの強力な日光をしのぎ、警察の目を避け、安全に暮らせる場として機能しているが、増水時には蓄えた家財ごと人命が押し流される危険をはらむ。複数のボランティアがたびたび、救出活動を展開してきた。

昨年11月に開催されたF1世界選手権のラスベガス・グランプリでは、開催に先立ち地下暮らしのホームレスの人々の一掃を試みる作戦が展開された。レース企画のために住処を奪ってまで開催するのかと、大きな議論を呼んだ。

日の当たらない地下世界へ人々はいかにして行き着き、どのように暮らしを送っているのか。全米有数の華々しい娯楽都市が隠す、もうひとつの顔に迫る。

暗闇の中で生きる工夫をする人々も…

地下トンネル網のなかには、もうひとつのラスベガスがあると言ってよい。トンネルには単に人々が暮らしているだけでなく、地下コミュニティをつくりながら、入手した用具を工夫して生活している。

拾った廃材や寄付された物品を巧みに利用し、過酷な排水路の環境を安らぎのシェルターへと変えた。英ガーディアン紙は2017年、地下世界へ潜入し、そこで暮らす人々を取材している。公開された動画は、370万回以上再生される注目を集めた。