トンネルの元住民が支援活動に奔走

行き場を求める人々に、善意の支援を寄せる団体がある。ボランティア団体や福祉プログラムが、こうしたトンネル住民にライフラインを提供。基本的な生活必需品だけでなく、就職の機会やより良い生活への道を提供するため、たゆまぬ努力を続けている。

米8ニュースは2022年、シャイン・ア・ライト財団の支援ディレクターであるロバート・バンハート氏率いるチームの活動を報じている。チームは過去7カ月間で、実に220人をトンネル生活から脱出させた。

Shine A LightのInstagramより

80人ほどのボランティアグループが班に分かれ、ピーナッツバターのサンドイッチや飲料水、救急キットなどを手渡しで配布している。警戒感を解きほぐし、ときに暴力さえ振るうトンネルの住民と信頼関係を築くことが、支援への第一歩なのだという。

取材当時46歳のバンハート氏自身、かつてトンネルに住んでいた住人のひとりだ。それだけに、一人ひとりの命の大切さや、住民によく見られる中毒や暴力の苦しみを、誰よりも深く実感している。トンネルに現在、1500人が暮らしていると語るバンハート氏は、「すべての人に救う価値がある」と断言する。

地下で受けた暴力がきっかけで、幸運にも地上へと抜け出したバンハート氏は、こんどは自分が人々を救う番だと考えている。

ラスベガス住民でさえトンネルの存在は知らない

トンネルの存在は、ラスベガスの地上に住む人々には知られていない。35歳女性で看護師のリズ・スミス氏は、いまでは地下に住む人々に医療ケアと精神的サポートをボランティアで提供している。だが、つい数年前まで、地下世界の存在すら知らなかった。

彼女はラスベガス・サン紙に対し、はじめてトンネルに入ったとき、ショックで心の回復に丸2日間を要したと振り返る。「私はラスベガスで育ちましたが、そんな世界があるなんて数年前まで知りませんでした」

彼女がリハビリ施設へとなんとか送った人々でさえ、一夜にして人生を変えられるわけではない。だが、チャンスがあれば変化は可能だ、と彼女は語る。30年間路上で酒びたりだった人が、フルタイムの仕事に就いたのを見た。

「実際に希望を目にしたとき、人々は(希望が存在するのだと)本当に信じることができるのだと思います。人は変われるのだと、そうして知るのです」