動画によるとあるトンネルの住民は、廃棄されたソーラーパネルで電気を確保。また、地元企業のつてで水の供給を受けているという。彼らはマットレスと羽毛布団を組み合わせ、トンネル内に居住空間を作り上げた。ある男性はステレオを設置し、カラフルな紙で自分の居住エリアを飾っている。
一見不要にも思えるステレオや装飾だが、日のほとんど当たらない地下空間で正気を保つためには、こうした趣味に力を注ぐことが非常に大切なのだという。ある住民はガーディアンのインタビューに対し、「ある種の日課のようなものを作ること」が精神衛生を保つために必要だと強調した。スケートや音楽、アート制作など、トンネルの住人の少なくない人々が、思い思いの活動に取り組んでいる。
1LDKほどのプライベート空間を作り上げたカップル
こうした取り組みは、ホームレスの人々本人たちだけの力によるものではない。この地域で活動する主に2つの非営利団体が、水・食料・電池などの生活必需品を提供している。
限られた物資を活用し、少しでも生活水準を向上する取り組みが続く。英デイリー・メール紙は、ラスベガスの「ほの暗い恥部」であるトンネルに、2010年時点で1000人規模の人々が暮らしていると報道している。
同紙は実際にトンネルに潜入し、男女のカップルを取材した。排水路の性質上、床に常に数センチ以上の水が溜まっているという困難な生活環境にありながらも、ベッドや洋服ダンス、本棚までを取りそろえ、カップルは自分たちだけの“自宅”を作り上げた。広さは400平方フィート(約37m2)。日本でいう1LDKのマンションほどだ。
掲載の写真では、水没した床を覆い隠せば、通常のベッドルームとほぼ見分けがつかないほど物品が充実している。もう1点挙げるならば、カメラのフラッシュ以外にはわずかな灯りしか見られないことも決定的な違いだろう。
カップルが暮らす排水路は比較的大きな空間となっており、コンクリートで囲まれた幅4~5mほど、高さ2mほどの空間となっている。足元に溜まる淀んだ不快な雨水を除けば、屋根も壁もある空間だ。通行人の目にさらされ風雨に打たれる地上よりは、よほど快適に暮らすことができる。もっとも、降雨時の増水の危険は常につきまとう。
別のトンネル住人は、地下生活の最大の苦労として、トイレがないことを挙げた。常に床面が水に沈んでいる環境は、水疱や感染症を伴ういわゆる「塹壕足」にもつながる。衛生面の確保は喫緊の課題だ。