あるとき彼女は、ラスベガスの空に高々と掲げられたハードロックの看板のもとで、支援していた一人の男性に呼び止められた。男はどこかで手に入れた小さなレザーバッグを大切そうに持っていた。その唯一の持ち物を、男は黙って彼女に渡した。感極まった彼女は、男性を強く抱きしめた。

支援者がサンドイッチと靴下を持って、誰かをより良い場所に立たせたいのと同じように、男性は他の人間のために同じことをしたいと思っていたように感じたという。

夕暮れ時のラスベガス
写真=iStock.com/wsfurlan
※写真はイメージです

ネオン街の地下で、支援団体の地道な努力が続いている

支援活動は地道だ。一人ひとり、根気よく手を差し伸べていかなければならない。30年前、ホームレス生活から救われたルイス・レイシー氏は、いまでは恩返しのため支援団体に協力している。1つずつていねいに、丘に打ち上げられたヒトデを海に返すようなものだ、とレイシー氏は語る。

シャイン・ア・ライトの共同設立者であるジェフ・アイバーソン氏は、ラスベガス市の取材に対し、どんなに人生が絶望的に見えたとしても、出口が必ずあることを知ってほしいと願っている――と語る。

「あなたがどんなに穴に落ちようとも、私たちはここにいて、あなたのためにロープを持っているんです」

それぞれの理由を抱え、人知れずラスベガスのトンネル世界に迷い込んだ住人たち。工夫して地下生活を乗り切っているが、明日は洪水の危険や暴力とは無縁の、より良い暮らしが待っているかもしれない。地上の世界へと復帰させるため、きらびやかなラスベガスの大通りの地下で、支援団体の地道な努力が続く。

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