不登校だった高2女子の変化

ここで、逆境のなかでレジリエンスを飛躍的に高めた女の子の話を一つ、紹介しましょう。

その子は高校二年生。といっても、長らく高校に通えていませんでした。彼女が私が主宰する親子支援事業「子育て科学アクシス」を訪れたときは、不安が強く、外に出るのもやっと、という状態でした。

成田奈緒子『子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する』(PHP研究所)
成田奈緒子『子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する』(PHP研究所)

ご両親と本人から話を聞いていく過程で、最初はほとんど口を開かなかった彼女が唯一、自分から話したのが「アニメのキャラクター」の話でした。

もともとお父さんが昭和のアニメファンで、小さいころはしょっちゅう二人でアニメのショーに行っていたそうです。学校に行けなくなった彼女は、そのことを思い出し、昭和アニメのキャラクターを模写することに燃えました。

ご両親は、「学校にも行かないで絵ばっかり描いて」と不安顔。しかし本人は次々模写を続けて、いつの間にか自分でストーリーを考え、スピンオフの物語を書いて、コミケに出店するようになりました。

なんとそこに「ファン」もつくようになり、そのことで彼女はどんどん自信がついてきました。それとともに、自律神経の活動量など、医学上の数値も急激に好転しました。さらには「やっぱり高校は出ておかないと」と自ら言いだし、通信制の学校に転校すべく準備を開始。この前進ぶりには、ご両親もただただ驚くばかりでした。

空を見上げる女子高校生
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

彼女を変えた「好きなこと」と「人とのかかわり」

なぜ、ここまで劇的な変化が訪れたのでしょうか。やはり第一には「好きなこと」を思い出し、体験したこと。ほかの人にはない知識やスキルが自分にはあった、という再発見が、彼女に自信を取り戻させました。

もう一つは、コミケでの「人との関わり」でした。SNSで発信した彼女の絵に、すっかりファンになって、わざわざ地方からコミケに訪ねてきた方と、初対面なのにとても楽しく話ができたそうです。

「人とコミュニケーションがとれた」という達成感、そして「ありがとう」と言われた安心感と感謝。それは今後も、彼女と「外の世界」を結び付ける紐帯ちゅうたいとなるでしょう。

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