1日7000歩程度の活動をする

先ほどお話ししたとおり、中高年の睡眠は「1日7時間以上は床にいない」というのが、まずは基本になります。

そうした考え方をベースにして、私のクリニックで、実際に患者様に睡眠指導をした例をご紹介しましょう。

次のページの図表4は、患者様に行動計を装着してもらい、「1日の活動量」や「睡眠の状態」を解析したカルテになります。

この患者様は当時57歳の女性で、「寝付きが悪く、なかなか眠れない……」ということで、私のクリニックにいらっしゃいました。

2020年7月4日から9日にかけてのカルテになりますが、クリニックで睡眠指導を行ったのは7月6日になります。

カルテの内容を具体的に説明すると、グレーの色の濃い部分が「よく眠れている時間帯」です。

これに対し、グレーの色の薄い部分が「途中で目が覚めている時間帯」=「睡眠が悪い時間帯」になります。

実際に指導をする前の7月4日から6日に比べ、指導後の7月8日と9日は色の薄い部分が減り、「よく眠れている時間帯」が明らかに増えていることがお分かりいただけるのではないでしょうか?

私がこの患者様に指導したのは、次の2点のみです。

①午前1時から午前8時までの7時間以外は床にいないこと
②日中にできる限り歩くこと

以下、順番に説明しましょう。

まず①ですが、この患者様の場合、7月6日に指導をする前は、起きる時間がバラバラで、午前8時に起きたり、午前10時に起きたりしていました。

話を聞くと、「居間に布団を敷いて寝ている」とのことで、7月5日は午前8時に起きているものの、寝足りなかったのか、午前10時から12時くらいまで、再び寝てしまっています。

ですから、この患者様にまず指導をしたのは、「午前1時から8時までの7時間以外は床にいないでほしい」ということです。

午前8時になったら起きて、居間に敷いた布団を片づけてもらい、それ以外の時間は床にいないように指導しました。

中高年の睡眠は「遅寝、遅起き、だらしなく」

先ほど、「睡眠のゴールデンタイムに合わせて、夜11時半(23時半)から朝6時半の間に寝ましょう」という話をしましたが、この時間帯を厳密に守る必要はありません。多少、時間が前後しても大丈夫です。

繰り返しになりますが、中高年の睡眠の基本は「遅寝、遅起き、だらしなく」です。

ここに「だらしなく」を加えているのは、中高年の場合、「この時間帯に、絶対に寝なければならない」と考えると、余計なストレスがかかってしまうからです。

余計なストレスは睡眠の質を下げます。

ですから、多少時間がズレてしまうのは、全くかまいません。

歳を取ったら、少しズボラな程度でちょうどいいのです。

次に②ですが、この患者様には、日中にできる限り歩くよう指導しました。

指導前の7月4日と5日は1700歩程度でしたが、指導後の7月7日は2000歩、7月8日は4000歩と徐々に歩数が増えています。

その結果、7月8日と9日は、ともに「途中で目が覚めている時間」が減り、「よく眠れている時間」が増えて、睡眠の質が向上しました。

1日7000歩程度の活動をする。これが第2の習慣です。