取引先と同じ組織の人間に対する言葉はどう使い分けるべきか。中国文献学者の山口謠司さんは「自分と同じ組織に属している者に対しては、敬語を使ってはいけない。取引先など、社外からの上司への問い合わせに対して『○○さんは、お休みをいただいております』と答える人がいるが、それは間違いである。『お休み』の『お』は丁寧語だから外し、『いただいております』も『もらう』の謙譲語なので外すべきだ」という――。
※本稿は、山口謠司『もう恥をかきたくない人のための正しい日本語』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
相手がたくさんの商品の中から選んだものに対する声かけ
店員さんが誤用しがちな日本語
× こちらで結構でしょうか?
↓
○ こちらでよろしいでしょうか?
× こちらで結構でしょうか?
↓
○ こちらでよろしいでしょうか?
子どもと洋服を選んだりするときに、私たちは「これでいい? これがいい?」などという聞き方をします。
一方で、明治時代初期の小説を読んでいると、女性は「これでよろしいかしら」、男性は「これでよかろうか」などという言い方をしているのが分かります。100年ちょっとで、言葉はこんなに変わってしまうものなのです。
さて、最近、店員さんが「こちらで結構でしょうか」と客に尋ねることが多くなったと耳にしました。
これは、日本語としては、失礼な言い方にあたります。
「結構」というのは、「申し分のないもの」「素晴らしいもの」という意味です。そうであれば「こちらで結構でしょうか」は、「この品物は、あなたにとって申し分がない素晴らしいものか?」と聞いていることになるのです。
こんなときには「こちらでよろしいでしょうか?」と言うのが適切な丁寧な言い方です。
客がたくさんの商品の中から選んだものについては、「こちらで間違いございませんか?」と尋ねるようにしましょう。