丁寧、謙譲、尊敬の使い分けで相手との親密度、距離感も表現

「してくれますか」は下品な日本語
× 部長に伝えてくれますか?

○ 部長に伝えてもらえますか?

「伝えてくれ」「渡してくれ」「電話してくれ」など、何かをしてほしいのは分かりますが、「してくれ」という言い方はとても下品な言い方です。

それに比べて、「伝えてもらえる?」「渡してもらえる?」「電話してもらえる?」という言い方は、優しい感じになります。

ただ、これだと少し女性的な言葉となるため、もしかすると男性だと会社内では使いづらいかもしれませんし、相手との関係も非常に親密な印象を受けてしまいます。

こんなときには、

「伝えてもらえますか」「伝えていただけますか」「お伝えいただけますか」
「渡してもらえますか」「渡していただけますか」「お渡し願えますか」
「お電話してもらえますか」「お電話いただけますか」「お電話お願いできますか」

という言い方をするのが丁寧ですし、相手にも感じよく受け取ってもらえます。

日本語は、丁寧、謙譲、尊敬を使い分けることによって、相手との親密度、距離感も表現することが可能です。

相手との関係によって三種類程度の言い方が自然と言えるようにしておくと便利です。

ビジネスの会話
写真=iStock.com/RRice1981
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尊大な気持ちを表す言い方になる

相手が席を外していないか確認したいとき
× Aさんおりますか?

○ Aさんはいらっしゃいますか?

時代劇などを観ていると「○右衛門はおるか?」「殿はおられますか?」など、相手の居場所を尋ねるとき、こんな言い方をしていることに気がつきます。

「おる」も「いる」も、漢字では「居る」と書きます。また旧仮名遣いでは、「為」の草書体を書いた「ゐ」を使って「ゐる」と書いていました。

さて、「おる」とは「ゐる」と「ある」が結合してできたものです。「ゐる」は「ある場所に座ること」、「ある」は継続的に「そこに存在すること」を表しますが、この二つが一緒になって「その場所にある程度の期間滞在している」ということを表すようになったのです。

ただ、「おる」は幕末〜明治時代になってから、「お、そこにおったか」「知っておる」「そこにおれ」など話者の尊大な気持ちを表すような言い方として使われるようになってしまいます。

こういうことから「○○さん、おりますか?」と尋ねるのは、尊大な話し振りだという印象を与えたり、ちょっと古くさい表現だなあと思われたりする可能性があるのです。

「おる」という言い方はやめて「いる」の尊敬語である「いらっしゃる」という言葉を使うようにしましょう。