私立中高一貫校の教育効果と大学入試の結果
近藤教授の分析によって、大学入試の結果は、入学後の学校の教育効果によって影響を受ける部分が相対的に大きい可能性があることがわかりました。もちろん、私立中高一貫校には優秀な子どもが多いわけですが、入学後の学校のインプットによって、より偏差値の高い大学に入学できる可能性が示唆されたのです。
このインプットの中には学校の教育内容に加えて周囲の生徒の質が含まれるでしょう。入試によってある水準以上の能力を持つ子どもが集まるため、子ども同士の交流からも刺激を受け、プラスの効果が期待できます。
これらの結果を考慮すると、少なくとも学力の面で見た場合、中学受験をする意味はあると言えるでしょう。
私立中高一貫校への進学機会は平等ではない
一方で、私立中高一貫校の教育の質は高く、大学進学にプラスの効果をもたらすという結果は、教育機会の平等という観点から、重要な意味を持ってきます。
私立中高一貫校の教育の質が高いということであれば、その教育を多くの子どもに受けるチャンスがあるほうが望ましいでしょう。しかし、実際はそうはいきません。
私立中学を受験するには多大な金銭的・時間的なコストがかかるためです。
一般的に私立中学を受験するための塾は、小学3年生の終わりから4年生の始めにかけて始めることが多くなっています。毎月の通塾の費用に加えて、夏期講習や冬期講習でさらにお金がかかります。受験前ともなれば直前講習もあるため、金銭的なコストはさらに膨れ上がります。晴れて私立中高一貫校に入学できたとしても、毎月の学費は公立校よりはるかに高く、これが6年間続くわけです。
また、私立中学の受験には、親の時間的なコストも無視できません。子どもの送り迎えに加え、体調・メンタル面の管理も重要になってきます。共働き世帯が増加している現在では、仕事、家事、子どもの受験と考えることが多くあり、親の負担も大きいと言えるでしょう。
私立中学を受験するには、親の経済的・時間的な余裕が必要となるのです。このため、現実的には、私立中高一貫校に行けるのは一部の家庭に限られてくることになります。
一部の恵まれた家庭の子どもが私立中学校に進み、その教育効果で高偏差値の大学に進む。これが教育格差の拡大につながっている可能性があるのではないでしょうか。
もちろん競争を前提とする資本主義の社会では、親の経済状況等による格差が生まれるのはある程度仕方のないことです。ただ、この格差が親から子の世代に受け継がれて固定化され、生まれによる格差がその後の人生を決めるといった状況になっていないか注意が必要です。