中学受験をするメリットは本当にあるのか

以上のような理由から中学受験が増えているわけですが、ここで1つの疑問が出てきます。それは、「わざわざコストをかけて中学受験するメリットが本当にあるのか」という点です。

確かに私立校の教育内容のほうが充実しているかもしれませんが、そもそも私立校に集まっている学生は、長い期間の受験勉強に耐え、普通の小学生には解けない難問に回答できる優秀な子どもたちです。このような優秀な子どもたちが私立校に集まっているだけであり、教育効果が過大に見積もられているという可能性があります。

要は私立中学校への進学が単に能力を選別する機能しかなく、能力の底上げに寄与していない可能性があるわけです。

この場合、小学生という感受性の高い時期に、多大な時間を勉強のみに割り当てる中学受験をすることに疑問が出てきます。はたして実際はどうなっているのでしょうか。

今回は中学受験のその後の大学進学への影響に関する論文を用いて、この点について考えていきたいと思います。

授業で先生から指導を受ける小学校
写真=iStock.com/koumaru
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私立中への進学は学力の向上につながるのか

中学受験の影響を検証した研究として、東京大学の近藤絢子教授の論文があります(*2)。この論文では、私立中高一貫校に入学することで、学力が向上し、より上位の大学に進学できるのか、という点を検証しています。

いわば、私立中学へ進学することの学力上昇効果を検証した研究です。

この検証を行う場合、やはり問題となるのは、「もともと頭の良い子どもが私立中高一貫校に進学しているだけなのではないか」という点です。私立中高一貫校に入学する子どもの学力は、通常の小学生よりも高いため、偏差値の高い大学へ進学する割合が高くなっている可能性が考えられます。近藤教授はこの影響をうまくコントロールした分析を行い、興味深い結果を明らかにしました。なお、分析対象となったのは神奈川と東京の私立中高一貫校に入学した子どもたちです。