公教育が抱える課題

これまで見てきたとおり、私立中高一貫校の教育の質は高い反面、誰しもがその教育にアクセスできるわけではない状況となっています。これは教育機会の平等という観点から見ると、大きな課題です。

佐藤一磨『残酷すぎる幸せとお金の経済学』(プレジデント社)
佐藤一磨『残酷すぎる幸せとお金の経済学』(プレジデント社)

この課題を解決するには、何が必要となるのでしょうか。

現状では私立中高一貫校が市場で生き残っていくために公立校よりも質の高い教育を提供し、それを経済力のある世帯が子どものことを考えて選択するという構図があります。これは、双方が合理的な選択を行った結果であり、妥当性があると言えるでしょう。

教育機会の平等という理想に近づくためには、公教育の充実が必要だと考えられます。

もし公立校が質の高い教育を提供できていれば、お金と時間をかけてわざわざ私立校に行かせる保護者は減るでしょう。また、経済的な理由から塾に行けない子も、公立校から偏差値の高い大学を目指せるようになります。

このような公教育の充実が教育機会の平等につながっていくでしょう。教育格差を拡大させないためにも、国や自治体による公教育充実への取り組みが求められます。

(*1)首都圏模試センターHPより
(*2)近藤絢子(2014)「私立中高一貫校の入学時学力と大学実績――サンデーショックを用いた分析」『日本経済研究』, 70(3), pp.60-81.

【関連記事】
「弟のいる長女のほうが文系を選びやすく年収が16%も低い」きょうだいガチャが人生に及ぼす意外な影響
日本は「親ガチャ」ではなく「出生地ガチャ」の国になる…「子供が増える8都市vs.消える39道府県」の残酷格差
人生のどん底は「平均48.3歳」でやってくる…幸福度の沈み方が深くなる人、浅く済む人の決定的な違い
大学無償化で「あと2人産もう」となるわけがない…岸田政権の子育て支援策はなぜハズしまくっているのか
「かつては東大卒よりも価値があった」47都道府県に必ずある"超名門"公立高校の全一覧