人口が右肩上がりを続けているうちは、不動産物件を持ってさえいれば左団扇の生活を送ることができる時代が確かに存在した。だが人口が減少し、世帯数の伸びも頭打ちの今、風向きは急速に変わってきている。
退職金を元手に、第二の人生でマンション・アパート経営に挑戦する人が増えている。年金だけでは経済的な不安もつきまとう昨今。退職金をただ食いつぶしていくより、“大家業”で収入を補おうとする意識が高まるのは当然といえよう。
ところが、現実はそう甘くない。不動産投資で苦い経験をした2人の例から、そこに潜む罠をあぶりだしたい。
「ルームシェア詐欺」に遭い多額の被害を被ったのは、東京在住の池田祐輔さん。公務員として勤務の傍ら、5年の不動産投資歴を持つ。
詐欺の舞台になったのは、東京都下に持つアパート4戸に3LDKの戸建てがついた物件。3800万円で購入した。2007年3月から、「八木」と名乗る30代男性に戸建て部分をルームシェア用に貸し出したが、入居後、一向に家賃が支払われない。
「はじめて会った日、『来週からでも住みたい』というのです。契約書は後で交わすことにして、その場で彼に家の鍵を渡したのですが、それがいけなかった」
その後、池田さんが八木と会おうとすると、仕事を理由に何かと断る。さらには「出張でインドにいる」などと、文字化けを装ったメールまで届く始末。不信感を募らせた池田さんが不動産コンサルタントに相談を持ちかけたところ、詐欺に間違いないという。シェアメートから集めた家賃を着服しているというのだ。
意を決した池田さんは、八木に対して法的手段を取ることを通達。すでに入居していたシェアメートの女性にも事情を話し、部屋を出てもらうことになった。