おだててやる気にさせてはいけない

さらに3つ目の褒め方のポイントとして、釣ることを目的に褒めてはいけません。なぜ子どもを褒めているのかを正直な気持ちで振り返りましょう。素直な気持ちを表すため、教育的なサポートをするため、といった自然な目的なら問題ありません。

一方で、褒めることで子どもの行動をコントロールしようとすれば、子どもは敏感に察知してしまいます。そうなってしまっては、その後の褒め言葉も素直に受け入れられず、子どもとの関係性がギクシャクしてしまいかねません。

また、仮に子どもを褒めて、行動のコントロールに成功した場合も大いに気を付けなくてはいけません。その場合、子どもは褒め言葉を期待して行動しているので、褒め言葉がないとやらなくなってしまいます。

また、褒め言葉の報酬によるコントロールが長期的に続けば、外発的やる気のリスクが心や体に影響を及ぼしかねません。

「比較」は「結果」よりたちの悪い褒め方

最後に、自分の子どもと他の子どもの能力を比較するのはやめましょう。

子どもができたことを褒めるときに、「クラスで1番ね!」とか、「○○ちゃんよりできたのね」とか、ついつい日常の子育ての中で、ポロッと口から出てしまうもの。さらに、そうした周りとの比較で、子どものやる気がアップしたなどの効果を体験したことさえある方も多いかもしれません。

実際に、社会的比較による褒め言葉が、子どもを一時的に強く動機づけることがこれまでの研究でもわかっています。

しかし、問題なのは長期的なやる気をサポートできるかどうかです。人生には変化がつきもので、子どもの学校や塾が変わることも、順位や評価が悪くなることも、いつだって起こりえます。

また、褒めるほどに順位が上がっている場合には、より競争の激しい環境に子どもが身を置くようになり、これまでのような結果が得られなくなります。

たとえば、地元の学校ではオール5だったのに、進学校に入学するとそこではオール3。そんなことだってしばしば起こりうるのです。そうなると、比較による動機づけだけでは、子どものやる気が簡単にへし折られてしまうことになります。

さらに、状況の変化がなかったとしても、周りとの比較は、勉強から発生する結果に基づくので、外発的やる気にあたります。そのため、周りとの比較からくるやる気は、長期的には、心や体の健康に悪影響を及ぼしてしまうことになるのです。

親からの「決めつけ」が子どもを呪う

褒め方以外にも、子どもへの声かけで注意しておくべき点があります。それは、親からの決めつけを子どもに押し付けないこと。たとえば、「あなたは女の子だから、文系脳よね」。こんな何気ない声かけにも実は危険が潜んでいるのです。

それを理解するために、「ステレオタイプの脅威(stereotype threat)」という概念を押さえておきましょう。これは、スタンフォード大学の心理学教授クロード・スティールらの研究から幅広く知られるようになった重要トピックです。