出席者を安心させるオーナーシップ

「運営者は、会議で起きたことすべてに責任を持つという姿勢を出席者に示すべき。『何でも思ったことを言ってくれ』と言いつつ、役員の顔色をうかがって一緒に部下を責めているようでは、出席者も気軽に発言できません。出席者に安心、安全な環境を提供してこそ、会議は活性化します。運営者にとって会議は営業と同じです。頼りない相手と商談して、本音を明かす顧客はいない。その場に来てくれた人をいかに満足させるのかという視点で設計・運営することで、出席者はのびのびと発言できるのです」(寺沢氏)

停滞会議のパターンはほかにもある。某メーカーB社営業部の会議では、週1回、営業部員が自分の案件の進捗状況を部長に報告する。開始は朝9時、終了予定は11時だが、ランチ休憩を挟んで午後までずれ込むことも珍しくない。議論が白熱するから予定時間をオーバーするのかと思いきや、実態は逆だ。B社営業部員の高畑昌弘さん(仮名)は、会議への不満を次のように漏らす。

「営業部員は10人いますが、1人につき少なくとも15分かかるので、会議全体では2時間をオーバーしてしまいます。部長は『情報共有のために担当外の案件についても話を聞いておけ』と言うけど、参考にならない報告も多い。同僚が部長にネチネチやられている間はボーっとしているだけ。迂闊に午後のアポイントも入れられないし、いい迷惑ですよ」

これぞまさしくダラダラ会議の典型。まずは応急処置として、時間内に結論が出ない場合、結論を出す日時を具体的に決めて切り上げるといったルールづくりが急務だろう。ただ、「問題の根はもっと深い」と寺沢氏は指摘する。

「そもそも会議がマンツーマンの個別ミーティングと化している点が問題です。1対1で順番に回していく形式で出席者を惹きつけられるのは、カリスマ性を持った一部のリーダーのみで、普通の人には少々荷が重い。会議の基本は、マンツーマンより全員参加のマルチ形式。進行役がボールをうまく回して全員に触れさせてこそ、出席者のモチベーションを高めることができるのです」