“歩く会議”の効果とは

A社、B社を例にして停滞する会議の問題点と改善策を紹介してきたが、これはいわば原因分析型のアプローチ。では逆に理想追求型で見直すとしたら、どのような会議が参考になるのか。そこで紹介したいのが、ぐるなびの“ウオーキングミーティング”だ。

ぐるなびの創業者である滝久雄会長(写真右から3人目)。1940年東京生まれ。東京工業大学理工学部卒業。ウオーキングミーティングの参加者は会長が直接指名する。指名された社員は自分の都合を優先し、断ってもよいため実務の負担にはならない。多忙のため8割くらい断っていると話す社員もいる。

外食産業の苦戦が伝えられる中、飲食店のインターネット検索サービスを提供するぐるなびは、3期連続で増収増益を達成(※雑誌掲載当時)。2010年3月期で総掲載店舗数は50万店以上、ユニークユーザー数は月間2000万人に達し、多くの飲食店やユーザーに支持されている。

ぐるなびの立役者は、インターネット普及期にいち早く飲食店検索サービスに目をつけた滝久雄会長兼企画開発本部長だが、滝会長のビジョンを社員に浸透させ、同社の成長を陰で支えてきたのがウオーキングミーティングだ。コースは本社のある丸の内から二重橋前に抜けて皇居を回る約7キロで、所要時間は70分。雨の日は、丸の内や銀座の地下街を縫うようにしてほぼ同様の距離を歩く。これを週3回、16年間欠かさず続けている。

「健康のためにウオーキングを始めたのですが1人だと3日坊主になる。話し相手がいたほうがいいと思い、一緒に歩く人を募ったのが始まりでした。ウオーキングミーティングの効果は脳が刺激を受けてアイデアが浮かびやすくなること。また話し声は隣にいないと聞こえないので機密性が高く、デリケートなテーマを話すにはもってこい。弊社の社長は人事の相談があると、向こうからウオーキングへの参加を希望してきますよ」(滝会長)

一緒に歩く人は、主に幹部や管理職から指名する。たまに複数の出席者が重なることもあるが、通常は1対1で70分間だ。経営トップと2人で歩くのは緊張しそうだが、屋外の開放感も手伝うのか、社員に委縮した様子はない。むしろ親密感が伝わってくるほどだ。取材当日は若手社員3人が参加。そのうちの1人、加盟店営業部門東京ブロックの宮島かおりさんはこう明かしてくれた。

「非公式なので、公私にわたって遠慮なく話ができるところがいいですね。『親父さんは元気か』なんて、社内の会議では聞かれませんから。もちろん叱られる場合もありますよ。ただ、70分も叱り続けられるわけじゃない。30分叱責しても40分残るので、必然的に細かなニュアンスを伝えて誤解が起きぬようフォローしてくれたり、これからどう改善していけばいいのかという建設的な話もするようになる。これもウオーキングミーティングならではです」