時代に適応した新しい戦略を打ち出しても結局、組織は元の場所に戻ってしまう――。そうならないために、本当の変化の種をチームに根づかせる方法を伝授しよう。
ともすれば組織は以前の場所へ戻ってしまう
マネジャーにとって、会社の方向性が変わることは気持ちを奮い立たせてくれることだ。新しい機会を追い求めるのは、とにかく刺激的で面白いからだ。だが、戦略転換にはリスクも伴い、時間がたつにつれて変革を推進する勢いが衰えることがある。そうなったとき、個人や部門や組織全体が以前のやり方に戻るのは珍しいことではない。自分のチームが逆戻りしたことに気づいたとき、マネジャーはどのように正しい軌道に戻し、部下の関心を再び新しい方向に集中させればよいのだろう。
コッターインターナショナルの最高イノベーション責任者で、ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授でもあるジョン・P・コッターによれば、大規模な戦略転換が実際にうまくいく事例はわずか5%にすぎない。「後戻り」という問題はよくあることなのだ。
チームが後戻りし始めたら、リーダーはまずその背後にある原因を究明する必要がある。コッターも、カナダのトロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメントの学長、ロジャー・マーティンも、ほとんどの戦略転換は、マネジャーが欠陥のあるビジネスモデルに従うため失敗すると述べている。これらのモデルは戦略構築と実行を人為的に切り離しているだけでなく、これらを別々の人間が担当することを前提にしている。構築と実行を切り離さないようにすることが、行き詰まりを未然に防ぎ、新しい戦略に対するチームの集中力を持続させ、組織を5%の成功例に仲間入りさせる助けになるのだ。
逆戻りを防ぐ最善の方法は、社員は何をするべきかを経営陣だけで決めないことだ。つまり、戦略の決定にできるだけ多くの人を、特に変革の影響を受ける社員を参加させるのだ。新戦略を採用することにより「誰がこれまでとは異なるやり方をしなければならなくなるか」を事前によく考えるよう、マーティンはアドバイスする。そして、新しい戦略について彼らが発言権を持てるようにすることだ。
「仕事のやり方を大きく変えなければならなくなる組織の人たちに、早い段階できちんと相談しなければ、大きなリスクをとることになる」と彼は言う。
残念ながら、多くの組織はこのような手法をとっておらず、戦略が完全に確定してから発表されることがほとんどだ。この場合、上司は部下たちに、彼らがほとんど知らない、もしくは関心がない戦略を実行させることになり、そこに集中させるのに苦労するはめになる。
チームが新しい戦略を拒否して古い戦略に戻るのを防ぐために、マネジャーは次のような取り組みをする必要がある。