まずは直属の部下を引き込もう
チームは往々にして、新戦略の差し迫った必要性を感じていない場合、古い戦略に逆戻りする。組織の全員が、新戦略にチャンスがあると告げられるだけでなく、自分もチャンスに気づく必要がある。行き詰まったら、直属の部下を引き込むべきだ。
「新しい戦略の方向性を信頼し、これまでと違うことをする必要を感じられるようにするためには、どこをどう改善し、修正し、強化すべきか。そして君たちは何をすべきなのだろうかと、部下たちに問いかけよう」と、マーティンは勧める。
「『伝統』には信じられないほど強い力がある」と、コッターは言う。メンバーが新しい戦略の差し迫った必要性を理解することに加え、自分たちの責任を自覚することも必要だ。「そこに新しい機会があり、自分たちにはそれを追求する責任があることを、十分な数のメンバーが信じることから変革は始まる」と、コッターは言う。
すべての社員を新戦略の決定に巻き込め
戦略の構築と実行が切り離されているケースにおいて、組織は2つに分断されている。マーティンが「選択者」と呼ぶ人(決定を下す人)と「選択権のない実行者」と呼ぶ人(決定については蚊帳の外に置かれて実行するだけの人)だ。「能動者」ではなく単なる「実行者」として扱われると、社員は自分たちの仕事が低く見られていると感じ、そのため何であれ新しいやり方でやろうという積極的な気持ちにはならない。チームのメンバーが古い戦略に戻ったときは、新戦略における自分の役割を彼らが理解しているかどうかよく考えてみよう。マネジャーは部下にただ同意させようとするのではなく、変革の勢いを強化するアイデアを考える気になるように働きかける必要がある。
意思決定はできるだけ下のレベルに移す必要がある。マーティンはこれを「選択のカスケード(階段状に流れ落ちる滝)」と呼んでいるが、この手法をとれば、社員たちは新しい戦略の下で、全員が何らかの決定権を持つということを理解する。「すべての社員を不確実性と競争の中で『選択者』として扱えば、よりよい戦略が実現される可能性が高くなる」と、マーティンは言う。さらに、これは互恵的なアプローチであることを忘れてはならない。「すべてを上で決めて下に命じるだけならば、一番下の社員――顧客に最も近いところにいる人は、問題に気づいていてもそれを誰にも知らせないだろう」。